新品種のサクラ発見!

藤枝曙桜

藤枝曙桜(写真提供:静岡新聞社)

樹木医が行く! 第33回

樹木医の方々が各方面で頑張っています。このコラムを書いている日(2021年8月17日)、静岡新聞の朝刊に素晴らしい記事が掲載されていました。日本樹木医会静岡県支部長である大石春夫さんが、藤枝市内で新品種のサクラを発見したというニュースです。すごいですね!

新品種は『藤枝曙桜(あけぼのざくら)』と命名され、オオシマザクラとソメイヨシノの雑種とみられるそうです。特徴として、開花初期は白色で、徐々にピンク色に変化するとのこと。あまり聞いたことのない面白い特徴ですね。私はどちらかというと注意力散漫なほうで、いろいろなことをキョロキョロと見まわすタイプなので、ひとつのことをジッと見るということができません。きっと私はそのサクラの前を通っても気づくことはなかったでしょう。

新品種発見を伝える記事

新品種発見を伝える記事(令和3年8月17日 静岡新聞)

 

また、別の樹木医の方ですが、数年前にも静岡気象台の敷地内に生えるソメイヨシノの開花標本木とされていたサクラが、じつはソメイヨシノではなく、別の品種のサクラであることを発見された方もいました。これもひとつのところで、じっくりとサクラを見つめ続けなければできないことで、私にはとてもできないと思います。

私は普段、ありとあらゆる樹種を対象に仕事をしています。ケヤキ、クスノキ、クロマツ、タブノキ、モミジ、サツキ、ツツジ、ヒバ……。もちろんサクラも対象です。相談を受けた木を日々観察、診断調査して、おかしなところ、変化したところに注目するという感じで仕事をしています。

そのため、相談を受けた木を見に行った際は、庭木ならその家の方、公園ならその公園の管理者の人にいろいろと質問し、丁寧に問診を行ないます。私が訪問する以前のことをよく知っているのは、やはりその方々ですので、その木に以前何が起きたのかを探っていきます。その問診の結果を受けて、私が見立てをつけて診断調査を開始します。当然、最初の見立てが外れることもよくあります。その場合はさらに問診を続けて、木の置かれている状況を比べながら、当たりをつけて探っていきます。

そんな仕事の進め方をしているためか、普段、何気なく眺めている木については、あまり真剣に意識を向けていないのでしょうね。「新品種発見!」などの場面に出くわすことはまったくありません。

現在の日本樹木医会静岡県支部長は大石さんですが、昨年夏、それまで20年以上静岡県支部長を続けていらっしゃった正木伸之さんが他界されました。私も樹木医になりたての頃からずっとお世話になり、よく怒られたものです。改めてご冥福をお祈り申し上げます。

喜多智康プロフィール

喜多 智靖

樹木医
アイキ樹木メンテナンス株式会社 代表取締役
弱った木の診断調査・治療に加え、樹木の予防検診サービス『樹木ドック』を展開中。NPO法人『樹木いきいきプロジェクト』では、東日本大震災で津波被害を受けた宮城県石巻市での除塩作業や学校における環境教育授業を継続中。
喜多さんのブログ『樹木医!目指して!』
アイキ樹木メンテナンス株式会社
NPO法人『樹木いきいきプロジェクト』 

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