大切にされているご神木の治療について(ケーブリング編)
樹木医が行く! 第12回
前回に引き続き、樹木医というミステリアスな職業の実像に迫るため、先日実施したご神木(推定樹齢400年)の樹勢回復作業(通称:治療)を例に、樹木医の仕事について解説してみようと思います。前回の「土壌改良」に続き、「ケーブリング」について書きます。
「ケーブリングって、何?」という方がほとんどだと思います。ケーブリングとは、幹と枝、枝と枝、時には幹と隣の木を、ワイヤーやロープを使って繋ぐことをいいます。枝が折れたり木が倒れたりするのを防ぐことを目的として行う作業で、分かりやすい例を挙げると、金沢の兼六園など、北陸地方の冬の風物詩「雪吊り」です。雪吊りは、雪の重みで枝が折れないように、支柱と各枝を繋いだものです。
今回のご神木になぜケーブリングを実施したのかというと、幹と太枝の間に亀裂が見つかったためです。このままでは台風等で徐々にこの亀裂が広がり、いずれ太枝が裂けて折れてしまう危険性がありました。(ただし、今日や明日、突然に!という状態ではありません)
今回使用したケーブリング資材はドイツ生まれです。これは耐久性・伸縮性のある樹脂製ロープで、金属ワイヤーのように木に食い込むことがないのが利点です。木の保護のために設置した金属ワイヤーが木の生長とともに幹に食い込み、逆に木にダメージを与えてしまうという事例をよく見かけます。それを避けることのできる優れもののケーブリングシステムです。
今回実施したケーブリングは、木を守るとともに、人も守る大切な作業です。前回紹介した土壌改良、今回のケーブリングなどの処置により、木を守り、人の安全を守ることが樹木医の仕事となります。木と人が安心して共存できる空間をいかにして作り出すかという、なかなか難しい仕事だなと思っています。
喜多 智靖
樹木医
アイキ樹木メンテナンス株式会社 代表取締役
弱った木の診断調査・治療に加え、樹木の予防検診サービス『樹木ドック』を展開中。NPO法人『樹木いきいきプロジェクト』では、東日本大震災で津波被害を受けた宮城県石巻市での除塩作業や学校における環境教育授業を継続中。
喜多さんのブログ『樹木医!目指して!』
アイキ樹木メンテナンス株式会社
NPO法人『樹木いきいきプロジェクト』
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