SUBAKOUBOU 落合ゆかりさんと黒板
オーナー・落合ゆかりさん
モノものがたり 第2回
「ほっとできる巣箱のように」
SUBAKOUBOU(スバコウボウ)には、大人もときめく可愛らしい生地を使ったハンドメイドの学用品が並ぶ。富士市、富士宮市の小学校にはおなじみのチェアカバーをはじめ、防災頭巾カバーや通学バッグなどの既製品の販売、好みの生地を選んだオーダーメイド、ミシンのレンタルスペースで作業することもできる。
店主の落合ゆかりさんは、自身の経験からお店を開いたという。
「娘の学用品を可愛くつくろうとしたら、思いのほか大変でした。小さな子どもがいて裁縫をするってハードルが高いんです。夜中に家族が寝静まってからミシンを出すけど、刃物があるから子どもが起きたらすぐに仕舞わないといけなくて。ここでは手ぶらで来てもらって、自分のペースで作業ができます。」
子どもが自分の持ち物だと分かるように、同じ生地を使ってお揃いにすると良いことや、チェアカバーにリコーダーを収納できる工夫など、落合さんのつくる学用品には子どもの成長を見守る親心が詰まっている。
落合さんの実家は、商店街の軒先などに付けるテントを製作していた。住居スペースの横の工場にはミシンがずらっと並び、母と縫い子のおばさんたちが作業をしている様子を子どもの頃から見ていた。
「父がお客さんとテントの相談をして設計し、母たちが縫って形にする。出来上がった物を見てお客さんが『良くなったね!』と喜んでくれる。その記憶が私のベースになっていますね。私もお客さんの期待が喜びに変わるような物づくりをしたいです。」
店内にある落合さんお手製の大きな黒板には、たくさんの花が咲き、鳥たちの歌や働くミシンの音が聞こえてきそうな、賑やかなイラストが描かれている。それは明るく心をオープンにしてお話しする落合さんの人柄そのもの。イラストには「ココニイルヨダイジョウブダヨ」など、誰かを思いやる言葉が書かれている。
「子どもが巣立っていくのをお手伝いしたいし、あそこに行けばなんとかなる、そういう場所にしたかったんです。おしゃべりをしてストレスを発散できたり、子どもを気にせずに裁縫ができたりする空間。店内をおしゃれにしようと思えばいくらでもできるけど、お母さんたちが恐縮してしまう場所ではいけないと思うんです。子どもがここで自由に遊んでいても、多少床を汚してしまっても、大丈夫だよって言ってあげたい。私は子育てのすべてを応援したいんです。」
レンタルスペースで黙々と作業をする人や、子どもを交代で見ながらわいわいと作業をするお母さんのグループ、週に4回やって来ておしゃべりを楽しむ常連さんや、年に一度遠方からふらりとやってくる女の子まで、さまざまな人がここに集まる。それは、SUBAKOUBOUが羽を休め、ほっとできる巣箱のような存在だからだろう。
(ライター/針ヶ谷あす香)
SUBAKOUBOU(スバコウボウ)
富士市浅間本町4-11
TEL:0545-30-8174
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