かみや―潤天堂 神谷姫邸子さんと漢方談話

かみや潤天堂 神谷さん

店主・神谷姫邸子さん

モノものがたり 第4回
「誰もがいつか来た、ここにしかない薬屋さん」

 『かみや―潤天堂』は、漢方薬を取り扱う祖父の代から続く薬屋さん。店内には、近年のドラッグストアでは取り扱いがない漢方薬などの商品が並ぶ。

商品の並ぶ棚には、色画用紙を使った手描きのPOPが貼られている。店主の神谷姫邸子さんが描くイラストは味があって可愛らしい。壁に貼られた身体の図解のポスターは、先代から使われているようで年季が入っていて、理科室にありそうなリアルな人体模型は、臓器のパーツが取り外し出来る仕掛けだ。きっとこれらを使って、お客さんと話をするのだろう。

手描きのPOP

店内のPOPは神谷さんの手描き

 

漢方では、症状を治すことだけを目指すのではなく、病気になった人に主体を置いて治療をする。病気になってしまった原因は、生活習慣か、遺伝的なことなのか、お客さんの話の中で探していく。けれど、薬を飲むだけで治るわけでなく、自分自身が治していくという意識が大切だと神谷さんは話す。

人体模型や鍼灸経絡経穴図も会話の小道具のひとつ

「お客様に合った改善方法をお話しすることはできますが、実際に生活習慣を変えることを自分自身でしいと健康を維持するのは難しいです。食生活を変えるだけでも体調は変わるので、お客様に気づきを持っていただくようにお話しすることを心がけています。」

現代では、ドラッグストアで自分の判断で薬を買うことができるが、昔はこの店のように自分の身体のことを話して、薬を買っていたのだろう。もしかしたら、身体のことだけでなくて、家族のことや自身の悩みなども話すような場所だったのかもしれない。

「世間話を4時間くらい話していく方もいます。井戸端会議をすることもなくなってきているし、話せるだけ話してくださればいいと思います。ストレス発散になって、体調が良くなればいいですよね。」

神谷さん自身が漢方薬をどのように活用されているか伺った。たとえば先日、急に腰が痛くなってしまった時、体調の変化が起こる少し前の日々のことを振り返った。胃の働きが悪かったことや水の巡りが良くなかったことを分析し、それに合わせて漢方薬を飲み、血の巡りを良くするために身体を温めたのだそう。 腰の痛みと胃は関係あるの!?と漢方に無知の私は驚いた。こうしてお話を伺っていると、これまで自分の身体に無頓着だったかもしれないと気づく。血や水の巡りが滞ることが体調不良につながることや、薬の成分が身体のどこに作用されて症状が良くなるのかということを、これまで考えもしなかった。

神谷さんは、お客さんに漢方を正確に伝えるために勉強会に参加し、昔の書物を読んで知識を得てきた。自身の経験やお客さんの話も参考にしているため、さまざまな角度から分析されて、とても頼もしい。薬のことだけでなく、神谷さんに会いたくて訪れる人もたくさんいるだろう。

「いつも笑っていて、あの人に会うと元気になれるよねって言われる人が健康的ですよね」と話す神谷さんこそが、そんな会うと元気になれる人だと思う。

(ライター/針ヶ谷あす香)

かみやー潤天堂
富士市本町16-6-2F
TEL:0545-61-4000

 

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