地域の歴史を堪能できる穴場スポット【沼津市文化財センター】
コミュニティニュース
風光明媚な沼津市・島郷海岸の近くに、地域の歴史を気軽に学べて、かつ一風変わった施設があると聞いて訪れてみた。沼津市文化財センターは2019年に片浜地区から移転オープンした、沼津市の文化財情報の発信拠点だ。廃校となった旧・静浦西小学校の跡地を利用しており、学校の雰囲気を残した館内を巡るだけでもどこか懐かしさを味わえる。
元教室を展示エリアとして一般開放しており、観覧は無料。旧石器〜弥生時代の資料が第1展示室、古墳〜戦国時代が第2展示室に収められ、歴史の流れに沿って楽しめる。第3展示室では道路建設計画に伴う発掘調査で大きな話題となった高尾山古墳の出土品が披露され、施設の目玉となっている。今回の取材にあたり、長く沼津市の文化財行政に携わってきた主任学芸員の木村聡さんに話を伺った。
黒曜石 古墳 戦国の城
先人たちの営みに思いを馳せる
「じつはここ、博物館じゃないんです」と、いきなりびっくり発言の木村さん。この施設は法律上の博物館には該当せず、沼津市文化政策課の出先機関、つまり市役所の一部らしい。それにしては、石器・土器・装飾品などの展示が贅沢過ぎるではないか。
「我々の仕事は文化財を調査・管理・活用することです。遺跡の調査や出土品の管理は随時行なっていますが、ただそれだけでは誰にも知られませんし意味がないですよね。そこで市民の共有財産である文化財を活用する場として、この展示室を設けました。実際に来てみると気づくと思いますが、ここの展示はとにかく近くて丸出しです(笑)。貴重な資料の質感まで伝わるように工夫していて、実物に触れる体験コーナーもあります。なるべく敷居を低くして、歴史や文化財をより身近に感じてもらいたいんです」(木村さん)。

熱く語ってくれた主任学芸員の木村聡さん

高尾山古墳の内部を再現した展示

貴重な文化財を間近で鑑賞できる
具体的な展示内容についても聞いてみた。
「この地域の歴史上のハイライトは、旧石器、古墳、戦国時代ですね。旧石器時代の井出丸山遺跡では約3万7千年前の地層から黒曜石で作られた石器が出土しました。これを科学的に分析したところ、伊豆半島から40キロ離れた神津島産の黒曜石であるとわかりました。人類が日本列島に渡ってきたのが約4万年前。その後まもない頃に人々はこの地で生活を営み、しかも船を使って神津島まで往復していたということです。この神津島の黒曜石は人類の航海史上、最も古い往復航海の事例を考古学的に証明したもので、世界的にも有名な資料なんです。
また古墳時代前期に造られた東日本最古級の前方後方墳・高尾山古墳は、墳丘の長さが60メートルを超える規模です。沼津市街地を走る都市計画道路の予定地からとんでもない遺跡が出たと、大きな話題になったことを記憶している人も多いと思います。この古墳ができたとされる西暦250年頃といえば、邪馬台国の卑弥呼がいた時代。当時の古墳としては最大級のものがこの地に造られたわけですから、なんだか誇らしいですよね。しかも未盗掘で、中に収められていた副葬品も良い状態で残っていました。第3展示室では高尾山古墳の発掘調査時に剥ぎ取った主体部や副葬品をそのままの姿で体感できるようにしています」(木村さん)。
戦国期の城についても話が及んだ。
「歴史ファンが大好きな戦国武将たちが活躍した舞台も、沼津にはあります。例えば国指定史跡の興国寺城跡は小田原北条氏の始祖・北条早雲(伊勢宗瑞)旗揚げの地とされています。次々と支配者が変わって17世紀初めには廃城になりましたが、大規模な石垣や土塁の跡が往時を物語っています。今後は高尾山古墳とともに史跡公園として整備していく予定なので、ぜひ現地にも足を運んでもらえたら嬉しいですね」と木村さん。
沼津市文化財センターでは現在、木村さんをはじめ5人の学芸員が勤務している。調査業務などで不在のこともあるが、来館時に事務室に声をかければ可能な限り展示の解説もしてもらえるそうだ。「ここ沼津は黎明期の日本人や古代スルガの王に選ばれた土地です。この施設も一見地味ではありますが、一度訪れてじっくりと展示を目にすればきっと、『意外とすごいぞ沼津の歴史!』と実感してもらえると思います」。そう語る木村さんの笑顔が印象的だった。
(ライター/飯田耕平)
沼津市文化財センター
沼津市志下530
TEL:055-935-5010
展示室見学:平日9:00~16:30
観覧無料 駐車場あり
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