[特別寄稿記事] 自分のペースで学び、生きる力を育む場 【まなびば】
和気あいあいとした『まなびば』の仲間たち
コミュニティニュース
2017 年に教育機会確保法が施行されて9年。不登校支援は、従来のような学校復帰が唯一のゴールではなく、子ども一人ひとりに合った教育を確保することに目が向けられている。「学びの場」の多様化が進み、その形はフリースクール、オルタナティブ学校などさまざまだ。その選択肢の一つである『富士市民立小中一貫校まなびば』を取材した。
仲間とつながり
スモールステップで生きる力を育む
富士市富士岡、赤渕川沿いの山間に佇む一軒家。玄関には『まなびば』の看板。ドアを開けると、「おはようございます」と運営責任者の萩原桂子さんが出迎えてくれた。9時半を過ぎると、一人、また一人と子どもたちが現れた。「今日は6人の子が来る予定です」。開校日の金曜に毎回来る子もいれば、公立校に行かない日だけ現れる子もいるそうだ。本日のメンバーは小学生4人、中学生2人、スタッフの増田さん。
『まなびば』の一日
9:30 オープン
自主学習
10:00 朝のミーティング
食材買い出し・調理・昼食など(仲間とでも個々にでも可)
13:40 帰りのミーティング
登校後、まずは各自が自分の時間を静かに過ごしている。10時になり、朝のミーティングが始まった。仲間とやりたいこと、お昼ご飯に食べたいものを順に言っていく。「パス」と言う子もいた。パスをする権利もここではある。お昼ご飯の材料を買いに近所のスーパーへ。意外と忙しい。「まなびばでの自由は、自分のやりたいことだけをやる自由とは少し違います。流れの中にどう参加し、関わるか。その選択を尊重しています」。ずっとひとりで遊んでいた子も、自分のタイミングでお昼ご飯の準備に参加していた。

のどかな雰囲気の『まなびば』会場の畑からは鶏の鳴き声が聞こえる

6児の母でもある運営責任者の萩原桂子さん(右)と副責任者の増田あかりさん(左)

朝と帰りのミーティングでは円になり全員が対等な立場で思いや考えを話し合う
大人たちの声かけは、一貫して子どもたちを尊重しているように見える。そう簡単にできることではないが、このような関わり方は萩原さんの子育ての経験に関係しているようだ。「6年前、当時小学1年生の娘が不登校になり、親子で居場所を探しました。低学年の娘が通いたいと思える場所が富士市にはなかったんです。子どもを育てるのに私一人じゃ無理。私自身が居場所を求めていました」(萩原さん)。
ないなら作ろうと、親子が一緒に集える場として、『まなびば』の前身となる『おやこのまなVIVAふじ』を自宅でスタート。始めた当初は、子どもたちや保護者それぞれが持つ価値観の違いに戸惑ったことも。彼らとの関わり、自身の子育てを通して、ようやく受け入れられるようになったことがあった。それは、子どもたちはそれぞれ違った気質、個性を持っていて、みんな反応が違うこと。「頭では分かっていたことでしたが、それが腹落ちしたんです。同時に、自分自身にも壊されたくない価値観があることを受け入れました」(萩原さん)。
「子どもは、それぞれのタイミングで困難を乗り越えようとしたり、小さなステップで自分らしくチャレンジします。 そうした自信を育む場の意義を強く感じました。私が他者を受け入れられたのと同じように、子どもたちが日常生活の中で他者との違いに気づき、認め合う。『まなびば』はそんな場でありたいと思っています。子どもたちはすでに生きる力を持っています。自分の明日を拓くのは、自分自身。この思いは富士市が掲げる教育基本理念『明日を拓く 輝く「ふじの人」づくり 一緒に学ぶ 一生学ぶ』 と同じです」(萩原さん)。
「個人の困りごとや共通の課題を協力して解決しようと話し合うのがクラス会議です。公立の学校に登校してみたいけれど勇気が出ない、と仲間に相談した子もいました。 その子は、話せた、聞いてくれた、一生懸命に考えてくれた仲間がいるという安心感から、『相談できてよかった』と表現しました。そして次の日、数年間離れていた学校に登校したそうです。尊重し合う仲間の存在が、チャレンジする背中を押してくれるのだと思います」(萩原さん)。

昼食は一人300円の予算内で自ら決め、買ってくる子もいれば仲間と調理する子も

目の前を流れる赤渕川は自然豊かで、季節を問わず子どもたちが遊ぶフィールドとなる
ある保護者からは、「うまくいかないことを経験して、葛藤しながらも、なんとかやって満足そうにしているわが子の姿を見て、この子を信じてみようと思えるようになりました」という声を聞いた。『まなびば』に参加する子どもの姿から、むしろ関わる大人や保護者の方が力をもらっているようだ。
現在、登録している子どもの数は14人、週1回の開校日に登校する人数は6〜10人ほど。少人数の良さもあるが、利用者が増えればより活性化するだろう。「誰もが気軽に利用できるように、昨年から参加費を安価にしました。まずは見学だけでも来てほしいですね。『まなびば』への登校が公立小中学校の出席扱いになる場合もあり、双方で連携をとっています」(萩原さん)。
安心して過ごしながら、チャレンジできる環境がここにある。

年に一度の吉永地区文化祭でのブース出店
ライター・三谷和葉 / 富士市出身、オーストラリア在住。一時帰国した際に自身の子が『まなびば』を利用したことで、その方針に共感。富士地域で子育てに悩むほかの父母たちにもその存在を知ってほしいと考え、今回の記事を『Face to Face』に寄稿した。
富士市民立小中一貫校 まなびば
小中学生が対象のオルタナティブ学校。居住地は不問で、富士岡会場のほか、富士市広見地区でも開催中。活動の様子をInstagramで詳しく発信しており、見学・体験は随時受付中。問い合わせは下記のボタンから。
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