ふらり春散歩 吉原商店街×Art『百花繚乱春至為誰開』

イベントレポート

春の声を聞き、寒さで凝り固まった心身をほぐしに散歩に出かけよう!と決めたものの、どこに行こう?とスマホで検索していると目に飛び込んできたのは、吉原商店街×Art『百花繚乱春至為誰開(ひゃっかりょうらんはるいたってたがためにひらく)』。なんとも春の散歩にぴったりではないか。ということで、ふらり富士市の吉原商店街へ。

春の商店街でアートに触れる

3月3日〜31日まで開催されたこのイベントは、吉原商店街のお店や空きスペースに静岡県内外で活躍するアーティストの作品を展示し、商店街の街並みをアートとともに楽しむというもの。主催は商店街に『アトリエテチ』を構え、オーダーメイド衣装製作を手掛ける、本紙Vol.203でもご紹介した小川浩子さん。「展示されている作品を通して、商店街のいろいろなお店へ訪れるきっかけになれば」との想いを乗せ、衣装づくりをつうじて生まれたつながりをもとにアーティスト選び、企画、運営を担う。2022年に続き2回目の開催となる今回は、ライブやワークショップも加わった。

岳南電車・吉原本町駅から西に約600m伸びる吉原商店街、イベントマップを片手にまずは吉原本町駅からほど近いトロニカ珈琲焙煎所へ。優しい電球の灯りに包まれた店内、コンクリート打ち放しの壁面には、使わなくなったコーヒー豆を利用し描かれた淡く優しい色彩の絵画が飾られている。「芳醇な深煎り焙煎コーヒーとアートを嗜む至福の時間」、そんなタイトル雑誌のモデルになった自分を妄想しながら、洗練された癒しのひととき。

アトリエテチにはあんにゅいロップイヤーうさこさんの作品が

トロニカ珈琲焙煎所の壁面を飾るのはコーヒー豆を用いた絵画

 

次はどこへと歩き始めると、信号先のレトロな佇まいの中山豆店が目に留まり、中に入ると可愛いイラスト画がお目見え。「この作家さんがお店の暖簾も作ってくれてね」と満面の笑みの店主が、「この先の時計屋さんにすごい作品があるよ」と案内してくれた。
創業74年老舗豆店の手づくり甘納豆を自分土産に購入し、数軒先のカワシマ時計店へ。ここには『ウッドメカニカル』と呼ばれる動く木製のロボットが。「これはね、ゆっくり回すと作品の情緒が溢れる仕組み」と、店主が作家さんの紹介や作品のポイントを丁寧に説明。ここでも「あそこの店に飾られている大きな絵もすごいよ」と案内され、普段訪れる機会が少ない店舗を次々巡り、自分土産は片手に持ちきれないほどに。どのお店に入っても自店商品そっちのけで展示アートを語り、他の店舗の展示品まで案内する店主の皆さんの笑顔が『百花繚乱』。

カワシマ時計店店主が紹介する水越亘将さんの作品

かりん糖の和田屋に飾られたアーティスト玉城博香さんの作品

 

来た道を折り返し、ローカルFM局ラジオエフのスタジオのウィンドウガラスに描かれた商店街地図、空き店舗内の紙ボックスに描かれたアクリル画、3人の作家作品が展示されたコワーキングスペース『creation』と、あちらこちらで足を止めてアートを堪能する。そろそろ日没を迎える時刻となり、寄れなかった店、出会えなかったアートに後ろ髪を引かれる思いで帰途に着くと、不思議なオブジェを発見。「中に入ってゆっくり見ていって」と声をかけられ、店の中へ。
オブジェの説明を聞きながら、かりん糖とお茶をいただく。え?と店内を見渡すと、そこは、かりん糖専門店だった。「向かいの唐揚げ屋さん、美味しいよ!アートも展示中」と、かりん糖和田屋の店主。次のお店に向かったのは言うまでもなく……。

アートから始まる店との出会い、人情味溢れる店主と四方山話(よもやまばなし)に花を咲かせ、人と人とのつながりに心温まる吉原商店街が大好きに。イベントをきっかけに生まれた商店街の新たな魅力、店を巡るワクワク感、初めて訪れる店の居心地の良さ、モノを買うだけではない楽しさに触れ、同時に古き良き昭和時代の商店街を思い起こす、春の一日となった。

空き店舗を利用して展示された角田ひとみさんのアクリル画

南岳堂とイラストレーター井手静佳さんのコラボレーション

(ライター/山崎典子)

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