60代ライターの散歩道【吉原商店街・一の市】
噂のサイダーかん
お出かけレポート
富士市・吉原商店街の『一の市」は、元旦を除く毎月1日に開かれる。先月1日、午前10時の開始早々から、商店街をぶらぶら散策した。
昭和レトロな雰囲気がなんだかまぶしい吉原本町通り
富士市のほぼ中央部に位置する吉原商店街のルーツは、東海道五十三次の宿場町だ。路傍で見つけた東海道四百年記念の標柱には「吉原宿」の刻印があり、江戸まで三十四里(約134キロ)とあった。この商店街が東海道・大宮街道の要衝であり、日本橋から数えて14番目の宿場町だったと電柱の案内板に書いてあり、「へえ~」と思う。いまでも創業300年の老舗旅館があると聞き、歴史探訪もかねる気分だ。
各地の商店街が「銀座」と呼ばれ、活気に満ちたのは、東京で1回目のオリンピックがあった昭和30年代から大阪で万博があった40年代だろう。当時を知る60代としては、その頃が恋しいわけだが、例えば大分県豊後高田市は懐かしのボンネットバスが行き交う昭和の町を再現し、年間40万人が訪れる観光地として復活した。この吉原商店街にも日よけや雨よけになるアーケードがまだ残り、光の加減やアングルによっては、映画『ALWAYS三丁目の夕日』に匹敵しそうな昭和レトロな店構えが写真に収められそうだった。
この日は吉原本町通りとも呼ばれるメイン通りの店先にさまざまな惣菜、野菜、和菓子、弁当などが並んだ。例えば手作り風のつくだ煮、いなり寿司、赤飯、おこわ、まんじゅう、富士山みたいなパン。野菜はセリ、わらび、みつ葉、新玉ねぎなど。さらに富士市の学校給食で人気のサイダー味の寒天・サイダーかんを販売する店のほか、食品ばかりでなく、かなだらいや色とりどりのはぎれを売る店もあった。
客層で目立ったのは主婦層だ。リピーターが多そうで、特別な買い物のために出かけてきたというより、普段のおつかいだろうか。店先に立ち止まってお目当ての品を見分し、店員さんと立ち話をする様子は、『ちびまる子ちゃん』の世界のようでほほえましい。
私自身は和菓子が大好物。こどもの日(5月5日)を前に、かしわ餅を買わずにはいられなかった。「富士・富士宮・沼津地区で一番のかしわ餅はどこのだろう?」などと考えながら歩いていると、3色まんじゅうに出くわした。落語の『まんじゅうこわい』ではないが、まんじゅうも大好物なだけに、たくさん買ってしまいそうで、「あ~、こわ~」と心の中で叫びながら物色した。かしわ餅のほうは、栗まんじゅうがおいしい老舗の和菓子屋・南岳堂で、家族や親戚の分を含めて14個を買い求めた。
手作りの甘納豆が人気の中山豆店、京都・錦市場の店先を感じた内藤金物店、クリームソーダやつけナポリタンで有名な喫茶店のアドニス、フルーツゼリーで知られる杉山フルーツなどの名店にも引き寄せられた。お肉屋さんからラードの匂いがして、お昼用に揚げたてメンチカツとから揚げを購入した。レシート1,000円分で1回できるガラポン抽選会がやりたくて、先述の内藤金物店の横まで戻り、2回チャレンジした。歩道では音楽ライブ、易者による占い(有料)などもあり、なかなか楽しかった。
富士市は山海の自然に恵まれ、都心から遠くはない。昭和30~40年代当時の雰囲気が残る店もまだある。富士山周辺の観光地としてインバウンド需要も掘り起こせそうだ。今後もこうした催しに出かけて楽しみ、いくらかでも活性化に貢献したい。
(ライター/佐野一好)
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