60代ライターの散歩道【木漏れ日のハイキングコース】

静けさに包まれた木造一切経堂

静けさに包まれた木造一切経堂

お出かけレポート

気温が高い夏は熱中症対策として外出を控えたい。とはいえ、樹木が作りだす木かげを歩いて運動不足を解消する手もある。2月は梅、4月は桜が有名で、富士山のビュースポットでもある岩本山公園へ、水筒とタオルを持って出かけた。木漏れ日のハイキングコースは歴史探訪でもあった。

頂上の芝生広場ときれいな夏空

頂上の芝生広場ときれいな夏空

身近な場所に遺産発見森林浴をしながら頂上へがんばった!

岩本山公園(富士市岩本字立木1605)へのルートは多々あるが、今回は日蓮上人が『立正安国論』の草案を著した実相寺(じっそうじ)方面から歩いた。総門をくぐるとすぐに木々が日かげを作っていた。鯉が泳ぐ池をながめ、木造仁王像が左右に立つ仁王門の前で帽子を取って一礼した。延段(のべだん)の通路を進むと、長い階段が見えた。台座に立つ日蓮上人の立像がある本堂は階段の上だ。針葉樹の木漏れ日が揺れる階段を上って一息つく。巨大な日蓮上人像を見上げ、また手を合わせる。事前調査ではこの先に祖師堂、そして木造仁王像と同じ富士市指定有形文化財の木造一切経堂がある。その経堂には一本の木から掘り出した、継ぎ目のない七福神の一木彫(いちぼくほり)があった。江戸末期の作品を見上げていると歴史を継承する実相寺のふところの深さを感じた。

仁王門前にハイキングコースの看板

仁王門前にハイキングコースの看板

一木彫

繊細で見事な一木彫に見とれる

身近な場所に遺産を発見。歩きに来てよかった。そう思いながら岩本山公園への古風な石段を踏んだ。鳥の声、そよぐ風、落葉樹の腐葉土、どれもが森林浴と相まって気分をリラックスさせてくれる。気温は33度だが、木かげが多く涼しく感じる。もちろん階段の連続はきつい。ふと、「ここでがんばらずにいつがんばるんだ」という学生時代の恩師の言葉を思い出して歩く。青春、再び!でも、きつい……。途中、ゼイゼイして、休憩所や鐘撞堂で一服した。慣れた人にはどうってことのない登りらしい。年上とおぼしき女性が涼しい顔で「こんちはっ」とあいさつしてくれる。鐘撞堂を過ぎ、竹林を左に見た先から下りがあり、木々の間から駿河湾を眺望する余裕が生まれた。

木漏れ日と古風な石段が続く

木漏れ日と古風な石段が続く

昭和をしのぶ鉄塔を発見

昭和をしのぶ鉄塔を発見

岩本山公園の頂上には広々とした芝生広場があった。他に展望台、カフェ、そしてアイスの自販機。孫を連れて歩いた後にアイスを買ってあげたなら、ジイジもいくらかはリスペクトされるだろうか。見ていたら食べたくなって、抹茶味を買った。大げさに言えば、ハイキングも登山と同じだ。すがすがしさは頂上にある。桜の木漏れ日の下で休んでいると、愛犬を連れたカップルが芝生広場で遊びだした。若いっていいなあ……。いや、自分はまだ60代だ。どこへでも歩いて行こう。青空をながめ、暑さなんかに負けまい、と誓った。

展望台から富士市街をながめた

展望台から富士市街をながめた

温泉でも見かけるアイスの自販機

温泉でも見かけるアイスの自販機

(ライター/佐野一好)

関連記事一覧

  • コメント ( 0 )

  • トラックバックは利用できません。

  1. この記事へのコメントはありません。