ツバキとサザンカの見分け方
樹木医が行く! 第34回
そろそろツバキも咲いてきたかと思います。私がよく受ける質問のひとつに、「ツバキとサザンカの見分け方を教えてください」というものがあります。ツバキとサザンカはとてもよく似ている近縁の樹種ですので、見分けるのはなかなか大変です。
ツバキはツバキ科ツバキ属に分類される常緑広葉樹ですが、じつはその中にヤブツバキとユキツバキという別々の樹種が存在します。この2樹種及びその園芸品種を総称して、一般的にツバキと呼ばれています。ヤブツバキの自生地は本州の宮城県気仙沼市あたりを北限とし、それより南の日本全域に分布しています。ユキツバキは東北地方から北陸地方にかけての日本海側の山沿いに広く分布しています。
一方のサザンカも、ツバキ科ツバキ属の常緑広葉樹。自生地は四国、九州、沖縄に加え、山口県にも分布しているとされ、ツバキと比較すると南寄りに分布しています。
さて、ツバキとサザンカを見分けるための一般的なポイントとして、今回は花の違いと葉の違いを紹介します。
まずは花の違いについて。ちなみに原種では、ツバキは赤い花、サザンカは白い花が基本となり、両者は本来、色からしてまったく違います。ただ、園芸品種が数多く生み出され、最近ではサザンカも赤い花というイメージがかなり定着しつつあるように思います。
開花時期としては、ツバキは12~4月、サザンカは11~12月となり、年内の開花はサザンカ、年明けの開花はツバキというイメージでしょうか。また一番有名なのは、花の散り方でしょう。ツバキは花全体がポトッと落ちることから、まるで打ち首のようだと、かつては武士が嫌がったそうです。一方、サザンカは花びらがバラバラに1枚ずつ落ちます。そのため、開花期に木の根元を見ると簡単に識別できます。
ただし、花はいつも咲いているわけではありません。花の時期以外でも見分けることが可能な、葉の違いについて見ていきます。葉の大きさは、ツバキが5~12センチ、サザンカが3~6センチとされていて、イメージ的にツバキはサザンカの倍の大きさ、というところでしょうか。
また、葉の縁(葉縁)では、ツバキはあまりギザギザしていない(鋸歯がない)のですが、サザンカは大きくギザギザが目立ちます(鋸歯がある)。
そして、葉の違いで最大の特徴といわれているのは、葉の付け根(葉柄)がツバキは無毛なのに対し、サザンカは有毛である点です。虫眼鏡で見てみるとよく分かると思います。
ところが困ったことに、ツバキとサザンカを交配させたカンツバキという園芸品種群があります。名前には「ツバキ」と付いているのですが、一般的にはサザンカの特徴が強いかなと思います。ツバキ、サザンカともに日本人に親しまれてきた樹木であるため、園芸品種もたいへん多く、また自然界での変異も多く見られます。判別の難易度が高くなっていることは間違いありません。
それぞれ、何の花か分かりますか?(答えはたぶん次回発表!)
喜多 智靖
樹木医
アイキ樹木メンテナンス株式会社 代表取締役
弱った木の診断調査・治療に加え、樹木の予防検診サービス『樹木ドック』を展開中。NPO法人『樹木いきいきプロジェクト』では、東日本大震災で津波被害を受けた宮城県石巻市での除塩作業や学校における環境教育授業を継続中。
喜多さんのブログ『樹木医!目指して!』
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