早起きは三文の徳【ビーチコーミング編】
お出かけレポート
浜辺を散策して貝がらや生物を観察したり、漂着した流木などをオブジェとしてながめたり、『ビーチコーミング』は以前から人気がある。波に洗われてカドが丸くなったカラフルなガラス片(シーグラス)、異国から流れ着いたブイ、潮騒の変化などを心にコレクションする趣味にはロマンがある。5月下旬の早朝、海辺へ出かけてみた。
海辺の“朝活”は心と自然が会話するすがすがしい時間
出かけた先は、静岡市清水区の蒲原海岸だ。国道1号バイパスの高浜I.C付近から、東名高速道路とバイパスが交差するあたりまでで、数キロの砂浜が続いている。帽子、長そでシャツ、長ぐつ姿で、砂に足を取られながら歩いた。時刻は午前6時、気温は約18度。沖にテトラポットがすえ付けられていて、その先に伊豆半島の陰影が見える。ここの海は入ってすぐに深くなる急深だから海水浴には適さない。投げ釣りのポイントらしく、釣り人が20人ほどいた。
最初に貝がらを見つけた。白くて、うずまき状の模様が個性的だ。石にも視線が止まった。「おっ、これはハート形だ!」。喜んで砂浜にしゃがんで写真におさめた。流木もある。微妙に曲がっていて、まん中に針金を付ければ……「木製ハンガーになるかな?」と空想がふくらむ。ふと思いついき、流木を並べ、スマイルマークを砂浜に作ろうとしたが、思い直して『FACE』にした。理由はそのほうが簡単だったからだ。写真に撮るとけっこうアートしている(?)。いやはや、なんだかすごく楽しい。気分がはずんでいる。
続いて波打ち際へ注意深く歩いて、砂の粒子がなぜきらきら光るのか、うずくまって入念に観察した。砂にもそれぞれ色があり、砂金のような粒が光るのだと気づく。波打ち際の砂浜を潮騒と一緒に歩く。目を細めてシーグラスを探すと、小さな茶色と乳白色が見つかった。もっとあるだろうか?期待しながら探した。だが、そのほかはなかなか見つからない。見上げれば空が青みを増し、打ち寄せる波に朝日が反射してまぶしい。貝がらなどの宝物を持ち帰りたい衝動を抑え、スマホで写真だけを撮り、あとからくる人のためにリリースした。「大きくなって戻って来いよ」と、魚に話しかけるかのようにひとりごちた。
通常、自宅周辺の散歩は20分だが、この朝は1時間に及んでいた。ある本によると、朝日を浴びると体内時計がリセットされて寝つきがよくなるとか。早起きは健康への第一歩だ。砂浜は歩きづらいが、おなかが空いて、気分がすがすがしい。朝の散歩にビーチコーミングが加わるだけで、「早起きした甲斐があった!」と思えるから不思議だ。海は多くの贈り物をくれる。その海に我々は何かお返しができているのだろうか――。そんなことも考えさせられた朝活だった。
(ライター/佐野一好)
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