吉原のゲストハウス『14 GUEST HOUSE MT.FUJI』
現在の吉原に宿る宿場
江戸時代に東海道第14番目の宿場町として栄え、昭和まで人の往来で活気に満ちていた吉原商店街。地元育ちの40代以上の人の中には『ヤオハン』や書店『文華堂』などの名にノスタルジーを覚える人もいるだろう。商店街の北にあった『澤田耳鼻科』もその一つだ。かつて耳鼻科があったそのビルに今春、『14 GUEST HOUSE MT.FUJI』がオープンした。オーナーで、吉原マネジメントオフィス代表取締役を務める鈴木大介さんは、活況の商店街を知らない若い世代だが、地域を盛り上げたいという熱意に溢れている。地域の賑わいの創出には「住む・働く・訪れる」の三要素が重要とし、ゲストハウスは訪れる人と地元の人をつなぐハブになると意気込む。
耳鼻科の撤退後、長い間そのままだった澤田ビル活用のきっかけは、2017年、空きビルをリノベーションし町おこしをするというテレビ番組の企画だった。鈴木さんが関わるようになったのは2019年2月からで、地元の業者と連携し、自らもノコギリを握り、内装に手を加えた。同年12月にプレオープン、今夏は国内外から訪れる人々を迎える予定だった。しかし、4月1日にグランドオープンしたものの、新型コロナウイルスの流行により数日で休業を余儀なくされた。
「しょうがないですよ。でも、何かやらなくてはいけないと思っています。」
昭和の賑わいを知っていると、今の状況はマイナスだが、それを知らない世代には、今がゼロ=スタート地点で、「これ以上はそんなに下がらない」と策を練る。ガイド付きの富士登山など、地元で楽しめる多様なワークショップやアクティビティをセットにした宿泊プランを主軸に、外出自粛の影響が残る今、『オンライン宿泊体験』も始めた。インターネットを通じて参加でき、周辺の散策、宿泊者同士の交流などを疑似体験してもらう。まずは知ってもらい、のちに実際に訪れてもらおうというのだ。もちろん、ゲストハウスの利用は遠方からの来訪者に限らない。1泊3,000円のドミトリーなら、商店街周辺での飲み会後、タクシーや代行運転を利用するより経済的な場合もあり、そういう利用の仕方にも期待している。
「一過性ではなく、常に人で賑わうような活気ある地域にしたい。ゲストハウスを通じた取り組みも含め、地域づくりに資する活動を続けていきたい。」
旅人が訪れ、地域の人が行き交う街の創出に一役買うゲストハウス。リノベーションで残された階段や壁などに懐かしさを感じつつ、新しい時代の訪れが感じられる空間になっている。
(ライター/小林千絵)
14 GUEST HOUSE MT. FUJI
部屋はドミトリー(相部屋)主体で、男女共同のドミトリー、女性専用ドミトリー、ツインルーム1室を備え、ドミトリーは1泊2,900円~、ツインルームは7,900円~。利用者はWi-Fi、シャワー、洗濯機、キッチンにあるものなどを無料で使用できる。
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