すてきなお店探訪 【富士編】 茶房 カノン

お出かけレポート
富士市柚木の『茶房 カノン』は、住宅地の路地にたたずむ一軒家の和カフェだ。抹茶や和菓子はもちろん、デザートやパスタなどの軽食も楽しめる。
目立った表通りではなく、車がせわしく往来しない地味な間道の角地にある。目印として店前にコミュニティセンターの國久公会堂があり、小学生も通学途中にお参りするという八坂神社がある。2018年6月のオープン以来、ひっそりと愛されてきた店だ。音楽にちなんだ『カノン』が店名だけに、クラシックがかすかに響く店内は、ほっと心がやすらぐ憩いの空間だ。
ところで抹茶とは、生茶葉を蒸した後、揉まずに乾燥させ、石臼で粉末状にした健康飲料だ。カノンは茶房だけに、抹茶を使用したメニューが豊富だ。例えばほのかな甘さとコクが魅力の八女抹茶、富士市松野の神戸醤油店の米こうじを使った米こうじ抹茶、抹茶と白いスチームミルクがおしゃれな抹茶ラテなどのほか、クリームあんみつ、手作りわらび餅、和づくし抹茶パフェなどのデザート、お得なセットメニューもある。
スタッフの前嶋さんによると、2時間ぐらいゆっくりとしていくシニアもいれば、このSNS時代、高校生が関西から来店したり、地元の小学生が抹茶と上菓子を食べ、まったりしているというからほほえましい。接客が丁寧でやさしいから、一人でも初めてでも居心地よく過ごせるのだろう。アジアや欧米などからの外国人客も多いそうだ。

高い天井の明るい店内

スタッフの前嶋さん
メニューには富士の銘茶もあり、こちらは静岡県在来種の棒茶に慣れた人をも未知の恍惚に誘いそうだ。3種の茶(『おくみどり』『つゆひかり』『やぶきた』)をブレンドした『暖茶日和』、バニラのような甘い香りの『静かおり』、たっぷりと茶葉を使用したほうじ茶とバリエーションがある。
取材時、富士市今宮で古くから続く秋山園から仕入れたほうじ茶をいただくと、体が温まり、豊かな香りに心が落ち着いた。そのほか、茶畑を再生する大淵の茶畑復興プロジェクトから生まれたオーガニックタイプのほうじ茶もいただける。
抹茶碗は沼津の陶芸家・眞柄光男氏の作品だ。独創的な手づくり陶芸品には、カトレア、ナデシコ、クレマチスなど印象的な名が付けられていて、抹茶を飲む際に好みで選べてユニークだ。ほうじ茶に続き、試行錯誤の上に完成したという看板メニューのひとつ、米こうじ抹茶(600円)を点てていただいた。抹茶椀はうす青色に富士山の描画が美しい『カトレア』を選ぶ。ぬくもりのある大ぶりの茶碗を拝むように手で包み、若緑色の抹茶を口に含むと、甘みと渋みのバランスが絶妙でたまらず目を見張った。

抹茶椀はお好みで選べる

『カトレア』でいただく米こうじ抹茶
陶器やハンドメイド雑貨などの販売、絵画などを飾れるレンタルスペースもあり、毎週火曜日には体験レッスンを受け付けているフラワーアレンジメント教室が開かれている。いろいろなシーンで使える和カフェでもあるのだ。
前嶋さんは「今後はメニューを更新して、例えば和紅茶、ほうじ茶ラテなどもご提供していこうと思います。ゆっくりとお茶を楽しんでいただくお店なので、お一人でもグループでも、お気軽にご来店いただき、お茶をしながら読書をしたり、おしゃべりしたり、気ままなひとときをお過ごしください」と語った。
お茶のカテキンやビタミンなどの栄養素が健康寿命を延ばす効果をよく耳にする。大通りのざわめきが届かぬ小径を、旅気分でぶらりと歩けば運動にもなる。同店の入口ドアにはステンドグラスがはめ込まれ、外から店内は見えない。初めての路地で、初めての和カフェで、気後れする人もいるそうだが、ドアを押してみよう。茶房で過ごす時間に、心のドアも開放されるはずだ。
(ライター/佐野一好)
茶房 カノン
富士市柚木441-1
TEL:0545-67-7006
営業時間:10:00~17:00
月・水・土曜定休 駐車場あり
※ 記事内にある価格等は取材時のものです
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