地元を再発見!『吉原郷土かるた』
歴史と魅力をかるたで伝えたい
古くから東海道の宿場町として栄えてきた、富士市吉原地区。往時の面影を残す吉原商店街や「おてんのうさん」の愛称で親しまれる吉原祇園祭などがあり、富士市内でも中核的な存在となる地域だ。ここで昨年、吉原地区生涯学習推進会・成人教育部が企画した『吉原郷土かるた』が制作・発売された。老若男女、多くの地域住民の協力によって誕生したかるたには、熱い地元愛がふんだんに盛り込まれている。
吉原地区ではコロナ禍によるイベント開催の制限に加えて、地域の活動拠点となるまちづくりセンターの建て替え工事も重なった。そこで、毎年開催してきた地区文化祭の代わりに、何か地域の人が関わり合えることはないだろうかと、生涯学習推進会で検討していたという。そんな中、富士市西部の松野地区で数年前に制作された『松野歴史かるた』の関係者の協力を得て、吉原地区でもオリジナルのかるたを作る企画が実行に移された。
かるたの札は全46枚。吉原商店街で毎月1日に開催される『一の市』や、地域住民の足として長年愛されている岳南電車、『平家越え』や『左富士』といった歴史的な名所旧跡など、吉原地区ならではの素材に加えて、身近な寺社や公共施設、ご当地グルメなども登場し、地元の人が「あ、これ知ってる!」と気軽に楽しめるよう配慮されている。
読札の句と裏面に書かれた説明文は成人教育部のメンバーで考えたそうだが、文章を読むだけでも地域の歴史や由来を知る社会科見学のような体験ができる。記述についての助言や校正では、地元で活動する『黒潮短歌会』や『駿河郷土史研究会』、吉原地区の歴史に詳しい有識者などの好意的な協力があったという。また、掲載スポットの場所が分かる地図も同梱されており、実際に現地を訪れてみるのも楽しそうだ。一方、絵札の原画は吉原小学校、吉原第一中学校、一般の地域住民から広く募集したことで、バラエティ豊かなものになった。中にはプロのイラストレーターとして活躍している人の絵もある。
生涯学習推進会・成人教育部部長の大箸晴久さんは、「せっかく作るなら、なるべく多くの人に関わってほしくて、あらゆる作業で地域を巻き込んでいきました。いろんな人の助けを借りて、発案から完成まで1年半かかりましたが、私たちだけでは作り上げることは難しかったと思います。大変ながらも楽しく取り組むことができましたし、長く住んでいる私たちも知らなかった地域の歴史や魅力を学ぶいい機会になりました」と語る。
また、同会副会長の神尾みや子さんは、かるたを購入した人からの印象的な感想を挙げた。「遠方に住んでいる子どもや知り合いに、地元のことを知ってほしくてかるたを送ったという方や、正月に集まった孫たちと何度も遊んで楽しんだという方がいて、嬉しかったですね。昔と比べると若い人が減って、地域のつながりも弱まっている中で、制作に関わってくれた人、遊んでくれた人が自分の住んでいる地域に改めて興味を持つきっかけになればと思います」。
かるたを起点に、地元ではさまざまな活動が派生している。健康増進と地域の魅力再発見を目的とした『吉原郷土かるたウォーキング』では、富士市観光ボランティアガイド同行のもと、かるたに登場した場所を歩いたり、子ども会の行事では拡大コピーしたかるたを使って大人数で楽しんだりと、認知度も高まっているという。また、吉原まちづくりセンターでは3月末まで、絵札の原画展を開催中だ。ほのぼのとした絵画作品を通じて、長い歴史と人々の活気が息づく吉原の昔と今が、温かみをもって感じられる。
(ライター/飯田耕平)
【問い合わせ先】吉原まちづくりセンター
富士市高嶺町6-3
TEL:0545-53-1580
受付:平日8:30〜17:15
駐車場あり
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