老化を朗らかに 笑って歳を重ねよう3

~脱毛の新常識~ 介護脱毛

とある夏の日のことでした。飲み会で隣の席にいた26歳イケメン君が私の腕を見て、「毛が生えてる、キモッ!」と叫んだのです。「人間だから毛が生えてるけど、何か?」と反論すると、その場にいた女性(30~40代)全員が「脱毛していないの?」と、毛が一本も生えていないつるつるの腕を並べました。毛がボーボー生えているのならともかく、それなりにお手入れをしていた私の腕、擁護してくれる人は残念ながらその場にはいませんでした。

人体に必要だから体毛はあるという概念、50代以上の方なら理解していただけると思いますが、どうやら体毛の必要性は大きく変わってきているようです。

ファッション脱毛と介護脱毛

体毛はなぜ必要なのでしょう。体毛があることによって、外気温に対して体温を一定に調節したり、外部刺激、紫外線、摩擦からお肌を守ったり、細菌や感染の侵入を防ぐことができます。また部位ごとに、頭髪は頭部の日常的な防護、眉毛・まつ毛は異物や小さな虫が目から侵入することの防止、鼻毛はウィルス・カビ・ほこりなどを吸い込まないためのフィルター役として、身体の健康維持に重要な役割を担っています。それにもかかわらず男女問わず脱毛する人が増えている背景には、衣服や冷暖房、衛生環境が進化して体毛の役割を代替できるようになったことや、SNSや美容メディアの影響で「体毛のない肌=清潔・美しい」というイメージが定着したことがあります。

脱毛は大きく分けると、医師や看護師が行なう医療脱毛と、美容サロンスタッフが施術するエステ脱毛の2種類があります。医療脱毛の特徴としては、高出力レーザーで毛根を破壊(永久脱毛が可能)・少ない回数で効果が出る・痛みを伴う・料金が高いなど。一方のエステ脱毛は、広い波長で低出力の光を照射して減毛または抑毛・完了までの期間が長い・痛みは少ない・1回の料金は安いなどの特徴があります。なお、脱毛はメラニン色素(黒い色素)に反応する仕組みを利用しているため、レーザーや光が反応しない色素の薄い白髪には脱毛効果が得られません。

ファッション脱毛はエステ脱毛が主流でしたが、ここ10年で医療脱毛(永久脱毛)が浸透すると、腕・脛・脇・デリケートゾーンなどの体毛は「なくて当たり前」、一方で、頭髪・まつ毛・眉毛などは「育てる・増やす・整える」とした美的価値観が急速に広がりました。

『脱毛サロン・クリニックに関する意識調査2024年(インターグ(株)調べ)』によると、「脱毛経験あり・脱毛に興味あり」と答えた割合は10代73%、20代63%、30代61%、40代49%、50代50%、60代以上24%と、世代間の意識のギャップがはっきりと見られます。脱毛を始めた年齢は高校卒業後の10代から20代前半が最も多く、その理由のトップは「見た目を良くするため」、次いで「清潔感」、「自己満足・自信の向上」です。脱毛の経験率は年代が上がるほど低下しますが、40代以上で「脱毛経験あり・脱毛に興味あり」と答える人が年々増加しているようです。理由は「自己処理が面倒」、「美容的自己投資」、「清潔感・衛生」などで、特に50代ではファッション脱毛とは異なり、将来自分が介護を受ける立場になったときに備えて、陰部や臀部周辺のデリケートゾーンの毛を処理しておく介護脱毛が注目されています。

介護脱毛は「排泄介助の際に拭き取りや洗浄が楽になる」、「清潔を保ちやすく感染症リスクの低減につながる」などのメリットがありますが、身内の介護を経験した筆者自身は、それほど必要性を感じませんでした。そこで介護職に就いている人や身内の介護を経験したことのある人たちの声を聞いてみると、

介護職者:「そのままを受け入れてケアをするのが仕事なので介護脱毛は必要ない」「必要性を考えたことはないが、お尻周りの毛はない方がありがたい」

介護経験者:「毛に絡みついた便を取る時に痛いと言われた」「将来面倒を見る時に大変だから脱毛してと娘に言われた」

などでした。介護職者の視点では「介護脱毛はしなくても困らない」とした位置づけのようですが、将来に備えた自己投資として介護されやすい身体(介護脱毛)を考える時代になったのかもしれません。

とある夏の日をきっかけに、体毛について深く考えることとなりました。体毛は身体を守ってくれる大事な存在でありながら、頭髪、まつ毛、眉毛はもてはやされ、腕、脛、脇の毛はなくて当たり前になりつつある現実を目の当たりにし、「キモッ!」と言われた腕の毛をもう少し愛でてあげたい気持ちになりました。

(ライター/山崎典子)

次回は「片足立ち15秒できる?ロコモ予防は早いうちから」の予定です

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