フジサンタカイネ【オランダからようこそ】
ダイナミックな夏の富士山をバックに20分以上も取材に応じてくれたヤープさん(右)とアンクさん(左)。ちなみに、ヤープさんのTシャツがなぜ「タンザニア」なのかは不明
富士山周辺を訪れた外国人に 突撃インタビューしてみました
富士山富士宮口の山開きを間近に控えた7月初旬、登山口へ向かう道路がマイカー規制で通れなくなる前にと、ついにこのコーナーの取材で富士山五合目にまで足を伸ばしてしまった。六合目以上はまだ閉鎖中のこの時期、果たして外国人にアポなし突撃インタビューなど可能なのだろうかと一抹の不安を抱きながらも、待つこと約1時間。さすがに肌寒く心も折れそうになりかけたところで、意外にも駐車場からではなく六合目の方からまばらに降りてくる観光客の中に、彼らを発見した。
今回の主役はオランダ出身で現在はともにオーストラリアのシドニー在住という美男美女カップルだ。小児科医を務めるヤープさん(39歳)と、同じく医師のアンクさん(27歳)は終始フレンドリーな笑顔で快く取材に応じてくれた。「二人は恋人ですか?」と尋ねると、彼女のアンクさんはにこやかに頷いたが、ヤープさんは「えっ?僕たち恋人だったっけ?」とジョークを飛ばす。そんな仲の良い二人は2週間の日程で日本各地を旅行中。これまでに取材してきた外国人旅行者と比べて特筆すべきは、そのルートと移動方法だ。なんと二人はあえて九州の福岡空港に降り立ち、そこからレンタカーだけで富士山までやってきたという。福岡空港で借りたレンタカーを2週間後に成田空港で乗り捨てるらしいのだが、一体いくらかかるのか聞いたところ、「分からないけど、たぶんものすごく高いと思います」との答え。・・・そりゃあそうでしょう、間違いなく。今回はコーナー名も『レンタカータカイネ』に変えるべきか?でも二人旅なら新幹線のフリーパスの方が安上がりなのではと思い質問してみると、「いやぁ、僕たちは自由を愛してるから」とカッコ良すぎる決め台詞が炸裂。そんな言葉一生に一度くらいは言ってみたいものである。
ここまでの行程としては、福岡・長崎・雲仙・広島・姫路・奈良・京都などを約1週間で巡ってきて、運転はすべてヤープさんの担当だという。二人が暮らすオーストラリアも日本と同じ左側通行とはいえ、これだけの長距離を走って疲れないかと尋ねてみると、「日本は本当に交通マナーが良くて全然疲れないし、楽しみながらドライブできます」とのこと。特に日本のドライバーが運転中にクラクションを鳴らさないことがカルチャーショックだったそうだ。
前日は富士宮に宿泊して、この日は富士山の六合目と宝永火口周辺を歩いてきたという。取材時は富士山頂も下界(?)も晴れていたが、中腹とはいえ標高2,400メートルともなると気候の変化は目まぐるしく、突然視界が遮られるほどの雲に覆われたかと思えば、一気に晴れて見事な雲海が姿を現したりと、五合目の展望台からでもなかなかの絶景を堪能できた。海外旅行が趣味で南米のアンデス山脈や北欧のアイスランドなど、さまざまな大自然を見てきたという二人だが、富士山では瞬時に変わりゆく景色の美しさに感動したようで、「今回の旅で一番のハイライトは富士山になると思います」と語ってくれた。
今後の予定を聞いたところ、自然好きの二人らしく日本アルプス方面を経由して、信州から東京へ向かうとのことだった。ところが、今日はどこまで行くのかと尋ねると「分からない」という返事。毎日気が向いたところへ足を伸ばして、日が暮れるまで走ったところで『Booking.com(ブッキング ドットコム)』というウェブサイトを通じて最寄りの宿に予約を入れて泊まっているという。これもITの進化による産物とはいえ、その日の行き先も宿も決めずに旅をする軽やかさ。さすが「自由を愛する二人」である。
(ライター/飯田耕平)
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