人生100年の時代、「最期はどこで……」3
人生100年の時代、「最期はどこで……」
「人生は富士山登山ようなもの。一生懸命に山を登り切った後、いかに上手に山を下るかが大事なのよ」。40歳を迎えた時、80歳過ぎのご婦人からいただいた言葉です。
人生の頂きの捉え方は人それぞれ異なります。筆者自身60代に突入しても、自分が住んでいる富士市のブランドメッセージ「いただきへの、はじまり」を念頭に置き、人生まだまだ頂への始まりに過ぎないと思っています。ですが、シミ、しわ、たるみ、骨粗鬆症、腰椎ヘルニアなど年々身体の衰えは進み、日常生活に家族の介護も加わった今、40歳の頃はピンとこなかったご婦人の言葉が心に響くようになりました。
何かを目指して一生懸命人生の山を登っていても、身体機能、精神機能の衰えや、仕事でいえば定年や引退などさまざまな変化が訪れ、一度立ち止まって人生を振り返る時はやってきます。60歳を過ぎてからのセカンドライフ、70歳80歳と自分らしい人生を歩み、老いや変化を受け入れながら上手に山を下る。自力で山を下れなくなった時は介護サービスを上手に取り入れ、ゴール地点は自宅、はたまた介護サービス付き施設にしようかなど、人生の下山計画を立ててみるのも良いかもしれません。
65歳以上の方のためのよろず総合相談窓口
前回は、家族や自分に介護が必要となった時の相談窓口として、地域包括支援センターの存在をお伝えしました。介護問題だけでなく、65歳以降の人生計画に関わるさまざまな相談にも無料で応じてくれる心強い味方でもあります。地域包括支援センターは高齢者の方々を総合的にサポートするために各市町村に設置されており、電話相談や直接センターを訪れて相談することもできます。(地域によって担当が異なるため、所在地など詳しくはお住まいの地域の市役所・町村役場にお問い合わせください。)
そこで今回は、富士市吉原西部地域包括支援センターに伺い、どんな相談ができるのか、誰でも相談できるのかなど、詳しく教えていただきました。
Q 地域包括支援センターとはどのようなところですか?
A わかりやすく言えば、65歳以上の方のよろず総合相談窓口です。高齢者の方々が住み慣れた地域で安心して暮らせるように、さまざまな支援を行なっています。また介護が必要な高齢者の支援をする方や、40〜64歳の特定疾病における相談も受けています。
Q どのような方が相談に乗ってくれるのでしょうか?
A 保健師(経験のある看護師も可)・社会福祉士・主任ケアマネージャーが在籍し、3職種のチームアプローチで医療や福祉に関する専門的な相談に応じながら、必要なサービスにつなげています。
Q どのような方から、どのような相談がありますか?
A 親や義理の親、兄弟に介護が必要になったご家族からの相談が多いです。他にも本人の孫や甥などの親族、本人、病院などから相談があります。基本的には介護保険を申請してサービスを使いたいという相談が多いのですが、ひとつとして同じ相談はありません。その方が求めている望みに寄り添うイメージで、困ったことに対して必要なサービスや制度を紹介し、解決に導けるよう心がけています。
Q どのような状況での相談が多いですか?
A 認知症など医者に相談が必要なケースをはじめ、やはり家族が大変になってからの相談が多いです。心身の機能が衰えた先の不安、生活全般に関する相談、動けなくなってから困ったと電話して来られる方、まだまだ動けるうちに、こうなったらどうしようと相談される方など、困ってからの相談と予防的な相談のどちらもあります。
Q 具体的な事例があれば教えてください。
A 認知症で同じものを買ってきてしまう、本人が嫌がって病院に行かないといった相談などがあります。ただ私たちが前に出ていって解決するのではなく、家族が中心となって本人の支援をしていくための手助けをするのが役割なので、このような場合はアドバイスがおもな支援になります。人それぞれ解決の基準が違うので、家族が次のステップに進む決断をするために、家族の支援と公的サービスをどのように組み合わせるかをチームで考えています。
Q まだ介護は早いと思っているうちは相談できませんか?
A 「最近やれることが少なくなってきた」とか「やってはいるけれど大変になってきた」という相談もあります。まだ特に困ってはいない方についても、どのようにして今の状態をより良く長く保っていくか、健康寿命が延びるよう手助けすることも、地域包括支援センターの目的です。体力をつけるための介護予防教室や、認知症の進みを緩やかにするための脳の健康教室への参加アドバイスなど、介護予防について広く皆さんに知っていただく役割もあります。(介護予防教室や脳の健康教室は富士市の独自サービスです。)
Q 高齢化社会に大切なことは?
A 自分が介護される立場になって考えてみると、元気でいられるための準備をすることの大切さに気づくようになります。それこそが介護負担が少ない明るい社会への礎にもなると思います。また最期はどこで……など、いわゆる終活は早いうちに。できれば若い頃から、自分の理想の人生を求めるには何が必要かを考えておくことがとても大切です。また、地域社会のあり方でいえば、今の時代に合わせた現代版の向こう三軒両隣、ご近所同士がほどよくつながり、困った時にお互いを助け合うことができる社会になると良いと思います。
地域包括支援センターでは総合相談や介護予防事業の他にも、心の健康に関する相談や虐待被害の対応や防止など、高齢者の権利を守る取り組みも行なっています。
※次回は「介護施設」について
(ライター/山崎典子)
取材協力/富士市吉原西部地域包括支援センター(富士市国久保1丁目11−36)
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