コロナの片隅で(5) 富士市議会議員 小池義治さんに訊く
「この街が持つ価値と魅力を磨き困難の中でも発展につなげたい」
さまざまな分野で新型コロナの影響を受けている当事者の話を紹介してきた『コロナの片隅で』。今回は少し離れた俯瞰的な視点から、富士地域が受けた影響や課題を見ていきたい。
取材したのは、富士市議会議員の小池義治さん。2011年に初当選し現在3期目となる小池さんは、大学進学とともに上京。東京のITベンチャー勤務を経て富士へ戻り、これまでにNPO法人『富士山検定協会』代表理事や市民活動センター長などを務め、議員になる以前から地元と深く関わってきた。
市政に携わる中で感じたコロナの影響と、コロナ禍において富士が活かせる強みについて語っていただいた。
富士市会議員 小池義治さん
コロナにより富士市の産業に大きな打撃はありましたか?
また小池さん自身の活動はどう変わりましたか?
全国的な傾向と同じく、飲食業やタクシー・バス・運転代行など特定の業種が大きなダメージを受けていますが、地域経済全体へのインパクトは観光を主産業とする自治体などと比べれば限定的でした。富士市の主力である製紙業は、トイレットペーパーなどの家庭紙需要が減らなかったので、コロナの影響は軽微だったと思います。
また、都心部と異なり車社会であることや、日常的に人が密集する場面が少なかったことが幸いして、病院でのクラスターは別として、感染爆発を起こさずに済んでいます。コロナ以前は街の課題でもあった“密でないこと”がむしろ反対の価値を持ったのです。
しかし、サービス業をはじめもともと雇用が不安定だった人たちの困窮はさらに深刻になりました。女性や子どもの貧困など、コロナ以前からあった格差は拡大しています。この危機に、富士市はひとり親世帯の助成金を増やしたり、就学援助や給食費の面でも公的支援を続けています。
僕個人の変化としては、コロナ禍でブログの執筆や自ら開設したYouTubeチャンネルの動画制作に多くの時間を割くようになりました。政治活動の基本は人と会って考えや政策を伝えたり議論をしたりすることですが、コロナ禍ではそれが難しいため、違う形で発信に力を入れています。ブログでは、数字やグラフなどデータを使ってより正確にわかりやすく伝えることを意識しています。秋から始めたYouTubeでは、集会などで直接市民のみなさんとお会いする機会がないぶん、街の魅力を自分で伝える映像をとおして私の人となりを知っていいただいたり、市民の関心の高い情報を伝えるため、たとえばクリニックの医師と新型コロナ感染症やワクチン接種についての対談をしたりしています。
社会に大きな混乱を引き起こしたコロナですが、富士市が行なっている取り組みの中で、この状況が反対に追い風になるような取り組みはありますか?
今や世界的な潮流である『DX(デジタルトランスフォーメーション)※』は、コロナ禍で一気に加速しました。そのひとつがテレワーク。富士市では、世界有数の大都市・東京から新幹線で1時間という地の利を武器に、補助金を設定するなどテレワーク移住を推進しています。土地や物価が安く、自然環境も豊かな富士市に暮らしながら、週に一度上京する職種によってはそんなライフスタイルが可能になり、ごくふつうの選択肢の一つになろうとしています。働き方について真剣に考える人が増えたこの時代に、生活の質の向上を求める人にうってつけの場所が富士市なんだとアピールしたい。
ただ、この取り組みを進めるうえで念頭に置くべきは、富士市の持つ価値そのものを磨き上げることです。人を呼ぶために、奇をてらった仕掛けや表面的なキャンペーンに頼るだけでは、一時的なブームに終わってしまいます。ラーメン屋を例に挙げるなら、いくらお金をかけて凝った宣伝をしても、肝心のラーメンがおいしくないと話になりませんよね。
小手先の方法ではなく、こんな風に心地良く暮らし、働くことができますよという富士市ならではのライフスタイルに共感してもらうことが重要です。富士市の持つ価値に魅力を感じ、さまざまな形で関わり続けたいと感じる人たちを増やしていくことが、地域の発展につながるのだと思います。
※ DX「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」という概念
まだまだ気が抜けない状況は続きそうですが、小池さんから市民に向けて伝えたいことはありますか?
スペイン風邪の流行から100年、今は新型コロナとの闘いですが、ウイルスに限らず今後も南海トラフ地震や気候変動による影響など困難は続いていくでしょう。自分自身を少しずつ変えて、そういった変化に適応していくことも大切です。国内でもワクチンが十分にいきわたり集団免疫を獲得するまでは、まだしばらくそれぞれが少しずつ我慢をしながら、助け合っていけるといいなと思います。
(ライター/小林千絵)
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