ヒートアイランド現象を体感する

丸の内ビジネス街の高層ビル群と皇居

丸の内ビジネス街の高層ビル群と皇居

樹木医が行く! 第40回

今年の3月頃から定期的に皇居に行っていて、7月末にも猛暑日の東京を訪れました。「なぜ皇居に?」と思われるかもしれませんが、遊びではなく仕事です。何の仕事かは、宮内庁との約束によりこちらではお伝えすることができませんのであしからず。皆さんのご想像にお任せします。

皇居へは東京駅から徒歩で丸の内のビジネス街を通り抜けて行きます。ビジネス街は1キロくらいの距離でしょうか。いつも皇居に朝9時頃着くようにしています。朝ということもあり、梅雨が明けた7月末でも暑すぎることはなく、さらに皇居から吹いてくる涼しい風も感じながら歩きました。その日も猛暑日予報でしたが、皇居内で朝から仕事を始め、32〜33℃くらいの体感で決して涼しくはないものの、さわやかな夏を感じながら作業をしました。ご存じかと思いますが、皇居の中は緑に満ち溢れています。点在する建物以外は基本的に森林です。ちなみに「皇居参観」という約2時間の無料ガイドツアーもあるので、興味のある方は皇居観光をしてみてください。

その日は15時頃まで仕事をしたのですが、作業中は猛暑日であることを完全に忘れていました。仕事を終え、東京駅まで再び歩いて丸の内ビジネス街を通り抜けます。ところがこの道のりがあまりの暑さで、この日一番のしんどさでした。皇居内よりも体感で3℃くらいは高い印象です。皇居では朝から夕方までずっと立ちっぱなしだったのですが、わずか1キロ歩くだけの帰り道でそれ以上にがっくりと疲れました。この強烈な暑さの原因が「ヒートアイランド現象」です。

ヒートアイランド現象とは、都市の中心部の気温が郊外に比べて島状に高くなる現象です。ヒートアイランド現象は年間を通じて生じていますが、特に夏季の気温上昇が都市生活の快適性を低下させるとして問題となっています。東京周辺で 30℃以上となる時間数は、1980 年代前半には年間 200 時間程度でしたが、最近では 20 年前の約2倍になり、その範囲も郊外へ広がっています。(『ヒートアイランド対策ガイドライン改訂版(環境省・平成24年)』より引用)

ヒートアイランド現象の概念図(気象庁ウェブサイトより引用・再構成)
https://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/himr_faq/02/qa.html

今回私が体感した皇居から東京駅までの道のりは、東京都心の「ヒートアイランド」と、その中にポツンと佇む皇居という「クールアイランド」との対比だったのかもしれません。

ヒートアイランド現象のおもな要因として、①地表面被覆の人工化、②都市形態の高密度化、③人工排熱の増加の3つがあるといわれています。「地表面被覆の人工化」とは、街がアスファルトやコンクリートで覆われていることを指します。道路の舗装や建物の壁・屋根などが真夏に日射を受けると熱を蓄えて、空気を暖めます。さらに日中に蓄えられた熱が夜間に放出されるため、熱帯夜の原因となります。「都市形態の高密度化」とは、建物が密集することにより地上近くの風が弱まり、熱の拡散を低下させること。夜間の放射冷却が妨げられ、熱が溜まりやすくなります。そして「人工排熱の増加」は、建物のエアコンや自動車などから発生する熱が増え、それが直接大気を暖めることです。気温上昇の原因の一つと考えられています。

私たちが住んでいる地域は、富士山から連なる森林の先端にあります。富士山からの延長線のような公園や緑地帯(いわゆる「緑の回廊」)をうまく作ることができれば、富士山から直接涼しい風が吹いてくる過ごしやすい街ができそうだなぁと、ちょっと大きなことを考えてみました。やっぱり暑いよりは涼しいほうがいいですからね。

喜多智康プロフィール

喜多 智靖

樹木医
アイキ樹木メンテナンス株式会社 代表取締役
弱った木の診断調査・治療に加え、樹木の予防検診サービス『樹木ドック』を展開中。NPO法人『樹木いきいきプロジェクト』では、東日本大震災で津波被害を受けた宮城県石巻市での除塩作業や学校における環境教育授業を継続中。
喜多さんのブログ『樹木医!目指して!』
アイキ樹木メンテナンス株式会社
NPO法人『樹木いきいきプロジェクト』 

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