今年の夏は樹木にとって大変でした
樹木医が行く! 第31回
今年は特に梅雨から夏にかけて、樹木や植物にとって大変な年でした。梅雨明け後の暑さは、浜松で40℃越えを記録するなど、皆さんの記憶にも残っていると思いますが、じつは降水量についてもかなりの異常気象でした。簡単にまとめると、以下のように乾燥と湿潤が極端でした。
5月:平年の約半分 6月:平年通り
7月:平年の約4倍 8月:平年の約1/3
9月:平年の約3/4(ただし最初の1週間で約70%にあたる140ミリ降って、あとはカラカラ)
今年は8月1日に梅雨明けしましたが、その際にかなり多くの木々が弱ったり、枯れたりするかもしれないなと予想していました。理由として、7月にあまりにも雨が降り、いつも地面が水に浸かったような状態が続き、地植えの木々の根っこが根腐れを起こしている、もしくはかなり衰弱している状態なのに、梅雨明けでまったく雨が降らない日々が突然始まることになり、弱った根っこがうまく水を吸収できずに、水切れを起こすのでは?と考えていたからでした。
しかし状況は予想をはるかに超えていました。特に梅雨明けから2週間くらい経ったお盆休み後に、かなり深刻な問い合わせがひっきりなしに届くようになり、8月はその対応に追われて終わってしまいました。
問い合わせをいただいた木々が弱ったり、枯れたりした原因は、木が生える環境が悪かったため、もともと弱っていたため、除草剤で根が相当傷んでいたため、ナラ枯れのためとさまざまでしたが、一様に多雨から乾燥への切り替えに耐えられなかったために、弱ったり、枯れたりした木々でした。
せっかくなので、今ニュースなどでも取り上げられている「ナラ枯れ」について、簡単に解説したいと思います。今年8月以降、山のいたる所で木々が赤くなっているのを見かけたかと思います。その主な原因がナラ枯れによるものです。
ミズナラ、コナラといったナラの木で発生することが多いので「ナラ枯れ」と呼ばれています。最近はカシの木やシイの木でも発生しています。ナラ枯れは、カシノナガキクイムシという体長1センチにも満たない小さな虫によって引き起こされます。もっと正確にいうと、カシノナガキクイムシに付着しているナラ菌によって引き起こされるのです。
1本の木あたり100匹以上のカシノナガキクイムシが幹の中に侵入すると、そこに付着しているナラ菌の仕業で、水が通る導管の細胞が死んでしまいます。そして水をうまく木のてっぺんまで運べなくなり、突然木が真っ赤になって、枯れてしまうのです。
今年の場合はカシノナガキクイムシに攻撃されても、7月中は涼しく、雨も多く降っていたので、水がたくさんあり、なんとか生き延びることができていましたが、8月に猛暑で雨がまったく降らない日々が続き、耐えきれず、木々が枯れていったため、8月に突然紅葉にでもなったかのように山が赤くなったのです。
喜多 智靖
樹木医
アイキ樹木メンテナンス株式会社 代表取締役
弱った木の診断調査・治療に加え、樹木の予防検診サービス『樹木ドック』を展開中。NPO法人『樹木いきいきプロジェクト』では、東日本大震災で津波被害を受けた宮城県石巻市での除塩作業や学校における環境教育授業を継続中。
喜多さんのブログ『樹木医!目指して!』
アイキ樹木メンテナンス株式会社
NPO法人『樹木いきいきプロジェクト』
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