「根腐れ」って本当に起こるの?
樹木医が行く! 第30回
このコラムを皆さんが読まれているころには、もう梅雨入りしているかもしれませんね。今回は蒸し暑い梅雨の時期に気になる水やり、とくに「根腐れ」について書きたいと思います。
いろいろな場面で水やりについて話をしていると、多くの人がこんなことを言います。
「水やりをあまり頻繁にして、たっぷりと水をあげると、木が根腐れを起こしそうで心配です」
はたして本当でしょうか?
根腐れというのは簡単にいうと、根が酸欠になり、呼吸できずに枯れてしまうことです。ポイントとなるのは「酸欠」です。じつは根も呼吸をしているのです!
一般的には、田んぼみたいに水でぬかるんだ状態で、根がいつもジメジメした土の中にあって、酸欠になるというイメージがあると思います。水やりで心配なのは、土がこの状態になってしまうことです。ところがじつはもう一つ、よくあるケースがあります。それは、土がカチンカチンに締め固められて、空気(酸素)が土に中に入ってこないため、根が酸欠を起こす場合です。これは公園や神社などの木々でよく見られます。
さて、いつも過湿でジメジメした土に木が生えていると、本当に根腐れを起こすのでしょうか?
答えは「イエス」。ただし、木が根腐れを起こすには皆さんが思っているより、ずっと時間がかかります。
根腐れについての研究(春から秋にかけて行なわれた実験)データによると、土壌の過湿に弱い樹種の場合、過湿状態が続くと早いもので7日、多くは14日程度で生長が止まったり、枯死し始めたりするそうです。また、過湿に強い樹種だと30日程度で生長が止まったり、葉が黄色くなったりし始めるそうです。
過湿に強い樹種・弱い樹種をどう判断するかというと、もともと乾燥が厳しい砂浜、山の尾根、荒れ地に生えているような木、マツなどの乾燥に強い木は過湿に弱い傾向があります。一方、山の沢沿い、河原などに生えているような木、モミジなどの水気を求めている木が過湿に強い傾向があります。
この結果を見るに、梅雨の時期に1週間くらい雨が続いても、木はヘッチャラだということがわかりますね。また、2泊3日程度の旅行に行きたいとき、鉢植えの木に腰水(鉢の半分くらいまで浸かる程度の水に鉢を浸けること)を行なって出かけても、根腐れの心配をする必要がないということがわかります。
木は意外に丈夫で、そう簡単には根腐れを起こしません。少し気が楽になりましたか?
最後に水やりの復習をします。鉢植えの木は水はけのよい土で植えましょう。そして多肉植物などを除いて、基本的に毎日水をあげましょう。それもたっぷりと、下の穴から水が出てくるくらいに。
ちなみに、鉢植えの水やりには、水を補給すること以外にもう一つ大事な目的があります。それは鉢土の中の空気を新鮮な空気に入れ替えることです。鉢の中では、水やりで上からたっぷりの水が降りてくると、鉢土内にあった空気が下の穴から外へと押し出されます。そして、上からの水の層が通り過ぎた後、外気から新鮮な空気が鉢土の中に侵入してきます。これにより、水とともに鉢土内の空気(酸素)の補給も完了するということになるのです。
喜多 智靖
樹木医
アイキ樹木メンテナンス株式会社 代表取締役
弱った木の診断調査・治療に加え、樹木の予防検診サービス『樹木ドック』を展開中。NPO法人『樹木いきいきプロジェクト』では、東日本大震災で津波被害を受けた宮城県石巻市での除塩作業や学校における環境教育授業を継続中。
喜多さんのブログ『樹木医!目指して!』
アイキ樹木メンテナンス株式会社
NPO法人『樹木いきいきプロジェクト』
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