フジサンタカイネ【チェコの高校生】

チェコの高校生 トビアーシュ・フジェイさん

富士山周辺を訪れた外国人に 突撃インタビューしてみました

さてこのコーナー、覚えている読者はどれくらいいるだろうか?サブタイトルの通り、見かけた外国人観光客に声をかけて話を聞いて、写真を撮って紙面に載せる、ただそれだけの企画である。ごく一部に偏愛的なファンがいるとかいないとか、いないとか。とにかくこのたび、2020年3月以来4年ぶりの復活となった。休止していた理由の一つはいうまでもなくコロナ禍だが、この4年間で訪日旅行者はずいぶんと様変わりした。「爆買い」から「コト消費」への移行、経済発展に伴うアジア・中東からの個人旅行者の増加、歴史的円安、スマホアプリやAIの進化による行動様式の変化。さらには「オーバーツーリズム」として社会問題化するほどの観光客激増。はたしてインタビュアーとしてこの4年間のギャップを埋められるのか?一抹の不安と興奮を抱きつつ、確実に外国人と出会えるであろう富士宮市の富士山本宮浅間大社へと向かった。

コロナ禍当時の静けさを思い出せないほど賑やかな参道を歩きながら30分ほど物色したところ、数組の外国人旅行者とすれ違った。その中で今回声をかけたのは、社務所の前で静かに立っていた一人の若者。御朱印をもらう順番待ちの番号札を手にしている。これはぜひ話を聞いてみたい。「地元の情報紙の者ですが、お話を聞かせてもらえますか?」と英語で話しかけると、「僕は一人ですけど、いいですか?」とあどけなさの残る笑顔で気さくに応じてくれた。彼の名前はトビアーシュ・フジェイさん。チェコ南東部の街・ズリーン在住の17歳。なんとチェコの高校生が一人旅で富士宮に来る時代になっていたのだ。

17歳にしてすでに30ヵ国以上を訪れているというフジェイさん。日本訪問は今回が初めてで、ずっと楽しみにしていたそうだ。「13歳くらいから日本に興味を持っていて、趣味で日本語を習っています」と、いくつかの挨拶を日本語で交わし、メモ帳に「トビアーシュ・フジェイ」と手書きのカタカナを披露してくれた。お礼にこちらも……と考えたが、そういえば自分はチェコ語の単語を何一つ知らないではないか。苦し紛れにスマホの翻訳アプリを起動し、「今はこうして誰とでも会話ができるから便利ですよね」とチェコ語に翻訳してスピーカーで聴かせたところ、彼はただただ労わるような優しい笑顔をくれた。

気を取り直して、フジェイさんが手にしていた御朱印帳について聞いてみた。「日本語はカリグラフィー(文字を芸術的に表現する手法)としてとても美しいと思います。以前友だちから御朱印の存在を教えてもらって、いつか日本に行ったらこれを集めようと決めていたんです。今はまだ浅草の浅草寺と浅間大社の2ヵ所だけですが、他にもたくさん集めたいですね。御朱印帳は2冊あって、1冊は自分用、もう1冊は教えてくれた友だちへのお土産なんです」。

せっかくなので、浅間大社の見どころを案内しながらしばらく同行させてもらった。湧玉池の由来や富士山御霊水の使い方、拝殿での参拝方法など、日本好きの若者が積極的に文化を知ろうとしてくれるのが嬉しくて、聞かれてもいないことまでつい解説したくなる。おせっかい人間の典型的な言い訳である。

浅草寺(右)と浅間大社(左)の御朱印

富士山御霊水でお清め

作法通りに二拝二拍手一拝

 

約3週間の日本滞在で、取材当日はまだ旅の序盤。東京に宿泊しながら、この日は新幹線を使った日帰りで富士山周辺を巡っていたという。梅雨入り直前で富士山も姿を現していたため、御朱印とともにいい写真や思い出も持って帰ってくれたことだろう。

後日メールで連絡を取ったところ、これから京都・大阪方面に向かう予定とのこと。東京で撮った写真があれば送ってほしいとお願いすると、神社仏閣ではなくキラキラとした夜の渋谷や新宿の街を背景にした自撮り画像が届いた。浅間大社で話した際はとても大人びた印象だったが、そこは17歳の男の子。渋谷に行きたくないはずがない。等身大の若者らしさが垣間見えて、微笑ましい気持ちになった。

渋谷・スクランブル交差点にて

(ライター/飯田耕平)

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