フジサンタカイネ【フランスからようこそ】
日本に来てまだ4日目のヴァレリアンさん(右)とマリーヌ(左)さん。「まずは富士山に登りたくて」と嬉しい言葉を聞かせてくれた
富士山周辺を訪れた外国人に 突撃インタビューしてみました
富士登山シーズン真っ最中。この時期は実際に富士山に登った外国人観光客に感想を聞くまたとないチャンスで、これを見逃す手はないと、下山後の外国人観光客が訪れそうな場所としてまず思い当たったのが、富士山本宮浅間大社だった。さすがに疲れて一泊はするだろうから、富士宮市街のホテルから歩いて行ける観光地なら出会える可能性が高いはず、という算段だ。ところが7月下旬のこの日、浅間大社や湧玉池には溢れんばかりの群衆がいたのだが、その大半が日本人で、しかも誰もがスマートフォンの画面をじっと見ている。…そう、すでにお気づきかもしれないが、話題のゲーム『ポケモンGO』に興じる人々なのだ。肝心の外国人観光客が訪れる気配もなく、ポケモン以上の素早さで逃げるように退却し、作戦を変更。下山後に長距離移動をする旅行者を求めてJR新富士駅へ。富士山頂でご来光を拝んで下山した人々を乗せたバスが到着する時刻をおおまかに計算した上で、午前11時過ぎに狙いを定めたところ、この作戦が大成功だった。
今回取材に協力してくれたのは、笑顔にあどけなさも残る初々しいフランス人カップル、ヴァレリアンさんとマリーヌさんだ。二人はともに21歳の学生で、ITを学ぶヴァレリアンさんは地中海に面したトゥーロン在住、Webマネジメントを学ぶマリーヌさんは約700キロ離れたパリ在住という遠距離恋愛カップルで、「よく兄妹に間違えられるんですよ」と笑っているが、いやいや何をおっしゃいますやら。どこからどう見てもラブラブカップルにしか見えませんよ。
夏休みを利用したという日本での滞在は約3週間で、この日はまだ旅の序盤。日本ではまず最初に富士山に登りたいと決めていたそうで、東京には滞在せず、成田空港から特急列車と新幹線を乗り継いで直行してきたという。富士宮口の五合目まではバスで行き、そこから山頂まで、平均で5時間半といわれるコースを4時間で登ったそうで、これはかなりのハイペースだ。しかも下山後とは思えないほど、二人とも疲れを感じさせないスッキリとした表情で、「若いっていいな~」と思わず遠い目になってしまう。残念ながら登山時の富士山は厚い雲に覆われていたそうだが、「どんどん変わっていく景色や雲海越しにはるか遠くまで見渡せたことが印象的で、ものすごく感動しました」とマリーヌさん。
そのほかに日本で興味を持ったことを聞いてみると、意外にも駅の売店にあるジュースの自動販売機を指差して、「これこれ!」と笑う二人。「もちろんフランスにも自動販売機はありますが、日本のものはカラフルでデザインもカッコよくて、しかもこんなにたくさんの種類の飲み物が買えることに驚きました」と大絶賛。せっかくなのでいろんな飲み物を試しているそうで、今のところ一番のお気に入りはスポーツドリンクのアクエリアスとのこと。ちなみに食べ物ではおにぎりとどら焼きに感動したそうで、特にどら焼きはフランスにも似たようなものがあるものの、日本のどら焼きはあんこの甘さが上質で美味しいと、ドラえもんばりに熱く語ってくれた。
これからの予定は奈良・京都・大阪・神戸・姫路・広島を訪れてから、最後に東京へ向かうとのこと。快くインタビューと撮影に応じてくれた二人だが、話し込んでいるうちに乗車する新幹線の発車時刻が迫り、慌てて昼食の弁当を買うことになってしまった。成り行き上、売店の商品棚に並ぶ弁当の解説をしながら一緒に選んだのだが、日本でしか食べられないものを食べたいという二人が選んだのは、幕の内弁当と高菜おにぎりだった。「見た目は美味しそうだけど、味の想像がつかない。だからこれにします!」とヴァレリアンさん。異文化の中で未知なるものを積極的に選んで、体験して、楽しめる感性もまた、若い旅人ならではの特権なのかもしれない。いやぁ、ほんと、若いっていいな~。
後日、近況報告のメールとともに編集部に届いた写真の一部。奈良の鹿、姫路城、餅の実演販売、ラーメン(なぜかつけ麺)のほか、日本酒、地下足袋、お守り、浴衣、神社の鳥居など、二人が日本の文化を存分に楽しんでいる様子が伝わってくる。
(ライター/飯田耕平)
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