コワーキングスペースは、交流の場所。
開放的なフリースペース
出会いの連続が、地域の未来を創るまで
コロナ禍を経て、リモートワークや時短勤務など、場所や時間に縛られない働き方が広く認知されてきた。それらを実現する受け皿として、地方でも近年注目されているのが、コワーキングスペースの存在だ。共有の空間で独立した作業を行なう施設の総称で、さまざまな立場の人が時間借りで利用する。最近は富士地域でも開設が活発で、首都圏からの移住促進やビジネスマッチングの面でも効果をもたらしているという。
その一例として2020年、富士市島田町にオープンした県内最大級のコワーキングスペース『WORX(ワークス)富士』。この施設を運営する株式会社JOINX(ジョインクロス)企画部長の齊藤麻衣さんに、これからの働き方や地域の人的交流について話を伺った。
どのような人がWORX富士を利用していますか?
おもにはリモートワークをする会社員や事務所を持たない個人事業主の方などが、自宅や職場以外で仕事をするために利用しています。大人数での会議やセミナー、撮影用などの各種ルームは法人の利用が中心で、最近では個人で教室をしている先生やハンドメイド作家など、趣味や特技を活かした女性の利用も増えています。「職場以外で仕事をするなら自宅でいいのでは?」という意見もあると思いますが、高速通信のインターネットやフリードリンクなど、快適な作業環境に加えて、利用者からは「あえて生活空間と切り離された場所で働くことで、集中力や効率が高まる」という声が多く寄せられています。
利用者同士の交流にも力を入れているそうですね。
自由席ではあえて個室を設けず、カフェのように座席を点在させることで、利用者が出会い、直接声を交わし、新しいつながりが生まれやすくしています。事業に関する個別の相談についても、専門家や関連企業の紹介などスタッフがお手伝いしています。また、定期的なイベントとして、ビジネスマン向けの異業種交流会や、ハンドメイド作家とファンをつなぐ販売会なども開催することで、地域に根ざした人脈づくりを支援しています。
場所だけでなく、人と人とのつながりを提供しているのですね。
SNSやネット販売など、オンライン上でやり取りできる技術が発達して、離れた場所にいても多くの人と関わることができる時代になりました。
コワーキングスペースもその恩恵の上に成り立っているのは事実ですが、コミュニケーションの基本はやはり人です。特に富士地域のような規模のまちでは、実際に顔を合わせることでお互いの信頼感を育むことも大切です。
これから先、オンラインのみで完結できる仕事や文化活動はさらに増えると思いますが、何かあればオフラインで助け合える地方都市ならではの関係性もまた、かけがえのないものです。個人のライフスタイルに合わせた多様な働き方の実現と、人と人との密な交流を両立させることは十分に可能だと、私たちは考えています。社会に優しく、地域を元気にする拠点としてのコワーキングスペースを、元より多くの人に利用してもらいたいですね。
(ライター/佐野美幸・飯田耕平)
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