樹木は猛暑に耐えられるのか?
樹木医が行く! 第28回
8月中旬、台風一過の猛暑の中、このコラムを書いています。これを皆さんが読む頃には涼しくなっているのか?それとも残暑が厳しいのか?予想もつきません。
今年は例年に比べて1週間くらい遅い梅雨明けでした。梅雨の間はたいへん気温が低く、雨を除けば非常に過ごしやすかったです。ところが、遅い梅雨明けの後、猛暑猛暑の日々。人間が暑さでへばっているこの夏、樹木はどうなのでしょう?以前のコラムでも書きましたが、樹木にも暑さはこたえています。
暑い時期の樹木の動向は、根の生長具合を見るとわかりやすいです。夏は高温により、どんどんと体内の水分が蒸発していくため、根が活発に生長し、せっせと水を吸収します。しかし暑すぎると、その根の生長が鈍り、水を吸収する働きすら鈍ってしまいます。
地温と根の生長の関係を調べた専門的なデータによると、5℃くらいから根の生長が活発になっていき、25℃くらいで生長量が最大になることがわかっています。しかしその後は鈍り、35℃ではほぼ活動をせず、40℃を超えると生長が完全に止まってしまうのです。つまり、樹木にとっても猛暑日は暑さがこたえているということです。ましてや、今年頻発している40℃越えともなると、樹木もかなり苦しいのです。
地温と気温は必ずしも正確にリンクしないのでは?と思った方もいるかもしれませんが、ご安心ください。地植えと鉢植えについて土壌の温度を調べた調査データもあります。
地植え土壌は、京都市で8月(最高気温33℃)に行われた調査によると、地表面で最高温度40℃以上、最低温度20℃以下、深さ10センチで最高30℃強、最低20℃強、深さ30センチでは一日中ほぼ一定で25℃前後でした。一方、鉢植え土壌は一般的に一日の内で最高気温と最低気温の較差が大きく、夏場の日中は40℃を超えることも多いことがわかっており、夜間は直接日光がない分、気温より若干低くなるそうです。
地植えの樹木の根(養水分を吸収する根)は20~30センチくらいの深さに一番発達することがわかっています。温度という切り口からしても、その深さに根があることは最も理想的だということです。
では鉢植えの場合はどうすればいいのでしょうか?昼間の鉢土温度が直射日光の当たることにより、40℃超えを頻発するということがわかっています。この温度は樹木にとって致命的な厳しさです。それを緩和するための方法として、
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- 大きな鉢に植える
- 素焼きの鉢に植える
- 四角より丸い鉢に植える
- 白っぽい色の鉢に植える
などをすると、鉢土温度の上昇が抑えられることがわかっています。それ以外だと、やはり鉢を日陰に置くことでしょうか。また最近は、植物自体を暑さに強くする薬剤も販売されているので、そういうものを使用することも一つの方法かと思います。
暑い夏、樹木にも過ごしやすい環境を考えてみてください。
喜多 智靖
樹木医
アイキ樹木メンテナンス株式会社 代表取締役
弱った木の診断調査・治療に加え、樹木の予防検診サービス『樹木ドック』を展開中。NPO法人『樹木いきいきプロジェクト』では、東日本大震災で津波被害を受けた宮城県石巻市での除塩作業や学校における環境教育授業を継続中。
喜多さんのブログ『樹木医!目指して!』
アイキ樹木メンテナンス株式会社
NPO法人『樹木いきいきプロジェクト』
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