8月……。
猛暑にじっと耐えるケヤキの木
(富士市・米の宮公園)
樹木医が行く! 第16回
今年の夏も去年と同じくらい暑かったですね。今この文章を書いているのは8月の終わり。長期予報によると9月も残暑が厳しいそうです。皆さんが体感している残暑はいかがでしょうか?今回はその夏の暑さについて書いてみようかと思います。
真夏、さんさんと降り注ぐ強い日差しを受け、木がイキイキとしているように見えます。強い日差しによって、葉ではどんどん光合成を行っているはずです。光合成とは、葉が日光を受けて、自分の生長に必要な養分を作り出す働きのことをいいます。ところが、木は真夏にあまり生長をしていません。春から梅雨くらいにかけてはぐんぐん生長しているにもかかわらずです。
では光合成により作った養分は一体どこに行っているのでしょうか?実はそのほとんどが暑さ対策に使われています。懸命に暑さに負けないように現状維持を図っているのです。人間みたいですね!夏バテしないように一生懸命スタミナのつくものを食べている人間みたいに。真夏には人間同様に木もゼイゼイ言っているのです。
元気な木でも、なんとか夏の暑さをやり過ごそうと懸命になっているのです。ましてや弱っている木はひとたまりもありません。この時期に力尽きて枯れる木を多く見ます。梅雨の時期まではなんとか命を取りとめてきたものの、夏に高温少雨の直撃を受けて枯れてしまうのです。木にとって、夏は決して楽な季節ではありません。
そのため、樹木医という仕事をしている私ですが、8月に診断調査業務を行うことはあっても、基本的に治療業務は行いません。樹木医が相手にするのは「弱っている木」です。ただでさえ夏の暑さや少雨で衰弱しているのに、たとえば治療と称して、根をいじったりすることはとてもできません。致命的なダメージを与えてしまう可能性が高いからです。
そんなわけで、毎年8月は意外とのんびり過ごしています。しかし秋・冬は、「夏には治療ができないから」ということで、ポーンと後回しにした業務がたくさん溜まってしまいます。毎年秋・冬には「なんでもう少し夏に仕事をしなかったんだろう!」と後悔します。しかしながら、樹木の生理的なことを考えると仕方ないのかな・・・と諦めている次第です。
喜多 智靖
樹木医
アイキ樹木メンテナンス株式会社 代表取締役
弱った木の診断調査・治療に加え、樹木の予防検診サービス『樹木ドック』を展開中。NPO法人『樹木いきいきプロジェクト』では、東日本大震災で津波被害を受けた宮城県石巻市での除塩作業や学校における環境教育授業を継続中。
喜多さんのブログ『樹木医!目指して!』
アイキ樹木メンテナンス株式会社
NPO法人『樹木いきいきプロジェクト』
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