外陰部のトラブルについて
産婆の住む街から 第5回
新型コロナウイルスの感染拡大に、皆さん心も身体も不安定になってお過ごしのことと思います。人と接する外出は避けなくてはいけませんが、家にいても可能な筋トレやストレッチ、骨が弱くなるのを防ぐための日光浴はいつも以上に意識して行ないましょう。さて、今回は骨盤臓器脱や年齢を重ねた女性に起こりやすい、外陰部のトラブルについてお話しします。
骨盤臓器脱
骨盤内の臓器を支える筋肉や靭帯などが弱くなると、子宮脱や膀胱瘤、直腸瘤などにより、膣の中から何か飛び出してきたり(子宮脱)、膣の前側にピンポン玉のようなものが触れたり(膀胱瘤)、排便時に膣が膨らんできてしまい肛門周囲を押しながらでないと便が出にくかったり(直腸瘤)することがあります。とくに運動やウォーキングの後、夕方などに下腹部や陰部が重く感じたり、何かが挟まっているような感じで気がつくことが多いので、受診する場合は夕方がおすすめです。重症になると手術が選択されますが、保存療法をすすめられた場合には、重症化予防のために、これまでにご紹介してきた骨盤底筋訓練や、負荷をかけない生活をよりしっかりと行なうことが大切です。膀胱瘤や直腸瘤で尿や便を出しにくい方は、膣からはみ出す部分を押し込みながら排泄するとスムーズな場合もあります。膣口から脱出した部分が乾燥したり擦れてしまう場合には、保護用の軟膏を塗布すると少し楽になります。また、特殊な下着で外から抑える方法や、最近ではペッサリーという器具をコンタクトレンズのように自分で膣の中に入れたり外したりして脱出を防ぐ方法も好評です。
閉経関連尿路生殖器症候群(GSM)
閉経後は外陰部や膣にさまざまな不快症状が起こることがあります。陰部の乾燥や性交痛、性欲低下、ムズムズ、ひりひりする感じ、かゆみ、陰部や膣の変形など、その症状は多岐にわたります。閉経後の女性の半数以上が何らかの影響を受けており、歳を重ねるごとにゆっくりと進行していくといわれています。パートナーとの関係がない場合には、ダイレーターという道具で膣の萎縮を予防したり、産婦人科で内服薬や膣剤による治療を受けることも可能ですが、陰部専用の化粧品も販売されています。お顔のお手入れと同様、気にかけていきましょう。
小陰唇癒合
時折、乳児検診で左右の小陰唇が癒着していることを指摘される女の子がいます。原因としては、陰部が湿っている状態、おむつかぶれや感染によるただれ、エストロゲンが低い状態があげられます。これはおむつをしている赤ちゃんだけの問題ではなく、じつは陰部の組織が脆くなりがちな年配の女性にも当てはまるのです。左右の小陰唇が癒着してしまうと、尿道口が塞がって尿が出なくなってしまったり、清潔を保ちにくくなり感染を起こしやすくなったりする危険があります。入浴時には、必ず小陰唇を左右に広げて優しく洗い、乾燥が気になる場合にはオイルで保護して癒着を防ぎます。陰部のただれが気になる場合や左右の小陰唇を手で広げることができないような場合には、産婦人科で相談しましょう。
堀田 久美
菜桜助産所代表 助産師・保健学博士
ほった くみ/富士市宮島で助産所を営み、出産・産後ケア・育児相談から、更年期 以降の女性の健康管理まで、出産を経験する女性の一生をサポート する「ママたちのお母さん」。母親のための各種教室も随時開催中。
菜桜助産所
訪問看護ステーション菜桜
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