人生100年の時代、「最期はどこで……」8 最終回

最終回

「人生の最期、どこで迎えたい?」そう考えるようになったのは、義親の介護を経験し、いずれ自分も歩く道なのだと実感したことがきっかけでした。『介護』に直面すると、介護する側、される側にも、人生で経験したことのない難題が投げかけられます。介護には正解も不正解もなく、少しでも心地良い生活が維持できるように最適解を見出していくものです。

ただ、介護する側の生活も守らなければならず、介護される側は迷惑をかけたくないという思いがあり、介護環境の決定権はやむを得ず介護する側になってしまいがちです。筆者自身もそうでした。義父は子供たちが決めたことに文句も言わず、デイサービスに通い、ショートステイを利用し、そして施設に入居し最期を迎えました。本心は、一生懸命働いて建てた自宅で最期まで過ごしたかったのでは……と今でも心が痛みます。

介護に直面した時、お互いが心苦しい思いをしないためにも、「介護が必要になったら、排せつや入浴補助は誰にしてもらいたい?」「どんな状態になっても自宅で過ごしたい?施設に入居してプロの介護士さんに介助してもらいながら安心して過ごしたい?」など、介護される本人の希望を落ち着いて聞けるうちに確認しておくことはとても大切です。そして、家族の介護は自身の老後のモデルケースでもあります。「自分はどんな介護を希望する?」と想定し考え、介護について基本的理解をしておくことも大事ではないでしょうか。

介護サービスを利用するために知っておくべきこと

この連載では7回にわたり介護サービス、介護施設に関する情報をお伝えしましたが、「そろそろ介護が必要かも……」と思った時、まず何をすべきかを簡単にまとめました。
詳しい情報は記事のバックナンバーにアクセスしてお読みください。


 

市区町村の介護課や地域包括支援センター(高齢者の困りごと相談窓口)で、必要な支援や制度の手続きにつなげてもらいましょう。

介護サービスを利用する手順

① 要支援・要介護認定の申請
(ケアマネージャーによる代行申請も可)
② 認定調査・主治医意見書作成
③ 審査判定・認定
④ 介護サービス計画書(ケアプラン)作成
⑤ 介護サービス利用開始

おもな介護サービス

⚫︎ 訪問介護
 食事・買い物・掃除・入浴・排せつなどの介助

⚫︎ 訪問リハビリ
主治医が必要性を認めた場合に利用可

⚫︎ 通所介護(デイサービス)
日常生活上の介護や機能訓練、レクリエーションなどを提供する施設に日帰りで通う
※ 医療的ケアはない

⚫︎ 短期入所生活介護(ショートステイ)
高齢の要介護者が短期間施設に宿泊して介護サービスを受ける


 
公的介護施設の種類

⚫︎ 特別養護老人ホーム
 在宅介護が困難な要介護3以上が対象
 ※ 終身利用可

⚫︎ 介護老人保健施設
在宅復帰を目指す要介護1以上が対象
※ 入居期間3ヵ月

⚫︎ 介護医療院
長期療養が必要な要介護1以上が対象
 ※ 看取り可

民間介護施設の種類

⚫︎ 介護付き有料老人ホーム
原則65歳以上が対象

⚫︎ 認知症グループホーム
認知症の診断を受けた要支援2以上が対象


 

今年、日本の全人口の約20%が75歳以上になりました。87歳でフィットネス・インストラクターの資格を取得して90歳を超えた今も活躍する女性、70歳でトライアスロンを始めて91歳で世界最高齢の現役トライアスロン選手の男性。近年、驚くほど元気な高齢者も増えています。

また、64歳で脳卒中により右半身麻痺となったものの、リハビリを楽しみながら89歳になった現在でも左手だけのピアニストとして世界各地でコンサートを開催する男性も話題になりましたが、身体機能の低下を受け入れ上手に老いていくことの大切さを教えていただいているように思います。

何歳になっても、介護が必要になっても、誰もが尊厳を持ち、最期まで自分らしく生きる。人生100年の時代、「最期はどこで……」。

(ライター/山崎典子)

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