人生100年の時代、「最期はどこで……」6

高齢者施設編 グループホーム

男性81.09歳、女性87.14歳。これは厚生労働省が発表した2023年時点での日本人の男女別平均寿命です。またWHOが世界185か国の平均寿命をまとめた世界保険統計2025年において、日本人の平均寿命は84.46歳で世界第1位と発表されました。

 「健康で日常生活が制限されない暮らしをいつまでも」と誰もが望み願います。しかし、高齢化が進むとともに65歳以上の要介護者数は増加し、特に75歳以上での介護割合が高くなっています。また、介護保険法が成立施行された2000年以降、要介護となる原因の第1位とされる認知症の推計を見ると、2022年は65歳以上の認知症患者数が約443万人、団塊世代が75歳以上の後期高齢者になる今年2025年では、認知症患者数が471万人(65歳以上の約13%)を超え、今後も急速な高齢化とともに認知症になる割合も増加すると推計されています(厚生労働省調べ)。

 現状と向き合った時、介護が必要となった親や家族が少しでも心地良く暮らせる居場所、そしていずれは自分もと考えた時、どんな高齢者施設を選ぶべきか、選択肢として事前に考えておくことも大切です。

前回までは公的施設の特別養護老人ホーム、民間施設の介護付き有料老人ホームについてお伝えしましたが、高齢者施設には他にも、グループホーム、ケアハウス、住宅型有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅などさまざまな種類があり、入居条件、受けられるサービス、月額費用などそれぞれ特徴が異なります。

そこで今回は、認知症に特化した高齢者施設、読者さんからもリクエストをいただいた「グループホーム(認知症対応型共同生活介護)」についてお伝えします。

グループホームとは?

グループホームには、知的障害、身体障害のある方を対象にした障害者グループホーム(共同生活援助)と、認知症の高齢者を対象としたグループホーム(認知症対応型共同生活介護)の2種類あります。

高齢者施設としてのグループホームは2000年の介護保険制度の開始とともに「認知症対応型共同生活介護」として制度化し、介護保険法改正により「地域密着型サービス」の一つとして位置づけられた施設です。住み慣れた地域で、認知症症状の緩和や進行の抑制に配慮したケアを受けながら暮らすことができる高齢者施設として、認知症の高齢者とその家族にとっては重要な選択肢の一つとなり、全国的に施設数が増加しました。

入居条件は「原則65歳以上で医師から認知症の診断を受けた要支援2以上の方」で「施設住所と同じ市区町村に住民票がある方」です。日常的に医療ケアが必要な方や、共同生活が困難な方は入居できない場合もあります。

住み慣れた地域で自分らしくいきいきと暮らす

○特徴
シェアハウスのような住環境の中で、介護スタッフとともに少人数の利用者(1ユニットの定員5~9名)と共同生活をするのが最大の特徴です。認知症の知識と技術を持つ介護スタッフが24時間365日常駐し、必要な生活サポートを受けて、役割や生きがいを感じながら暮らす施設です。今ある認知機能に応じて、自立した生活が維持できるための介護サービスを受けることができます。

○費用
入居金(初期費用)は0~100万円と施設によって異なります。月額利用料は約13~30万円(居住費・食費・水道光熱費・共益費・介護サービス費 ※介護度により異なる)。その他、おむつ代、医療費、美容費、嗜好品などは別途かかります。

○施設設備
居室はすべて個室で、転倒防止用のサイドレール付きベッド、エアコン、クローゼットなどが完備されています。愛用している寝具や家具、雑貨など持ち込みが可能で、自宅の部屋にいるような装飾をすることができます。施設内には共有スペースとして大きなリビングがあり、テレビを観たり読書をしたり、くつろいで日常を過ごします。キッチン、トイレ、浴室は共有です。入浴は週2~4回(施設による)で、車いす入浴、リフト浴のなど設備もあり、利用者の状態に合わせた入浴ができます。

設備が整った居室

リビングでくつろぐ入居者の皆さん

 

○医療・健康ケア
訪問診療を月2回行ない、利用者の健康管理をします。急病などの緊急時は24時間連絡ができる協力医療機関と連携対応します。看護師を配置する義務がないため、施設により看護師が常駐していない施設もあります。看取り対応は施設によって可能です。

○日々の過ごし方
認知機能を維持するために、洗濯、掃除、家事など可能な範囲で参加し、できることは自分で行なう生活リハビリを基本としています。午前中はレクリエーション、ボール投げ、歌を唄うなどの活動を行ない、午後はゆったりのんびり過ごすようなスケジュールが組まれています。また、夏祭り、ぶどう狩り、クリスマス会、忘年会などイベントもあり、季節ごとに楽しい時間を過ごします。

ぶどう狩りイベント

繭玉づくりを楽しむ

 

○施設からのアドバイス
親を施設に入れるのは……と、ご家族が葛藤される気持ちもわかりますが、認知症は進行していきます。介護は子育てと違い、先が見えません。ご自身の生活を守ることも大切です。デイサービス、ショートステイから段階的に入居を検討するのも良いと思います。グループホームは、いわば高齢者シェアハウスのようなところです。介護スタッフが自分のおじいちゃん、おばあちゃんの介助をしながら一緒に生活をしていくというイメージを持っていただければと思います。施設を選ぶ時には、できればご本人とご家族が一緒に見学して、施設内の雰囲気を肌で感じていただくことをお勧めします。

(ライター/山崎典子)

【取材協力】
グループホーム みなみ風
富士市伝法1173-1

プライバシー保護のため画像は一部加工しています

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