フジサンタカイネ【オーストラリアからようこそ】

兄のディランさん(右)と弟のアダムさん(左)

富士山周辺を訪れた外国人に 突撃インタビューしてみました

今年最初のこのコーナー、初詣に訪れた外国人旅行者を取材しようと1月初旬、富士山本宮浅間大社を訪れた。ところが、いつもは見かけるその姿が、この日に限ってなぜか皆無。「正月の神社は地元の人で混み合うので要注意!」とでも口コミ旅行サイトに書かれているのだろうか?仕方なく定番スポットのJR新富士駅へと向かう。

夕暮れも迫る頃、なんとか駅構内の売店で男性2人組を発見。オーストラリア西海岸の都市パースからやって来た兄弟で、エンジニアのディランさん(25歳)と、大学生のアダムさん(18歳)だ。すでにお気づきかもしれないがこちらの兄弟、驚くほど見た目が似ていない。最初に二人の関係を尋ねたとき、「ブラザー」と言われ、「ああ、それほど仲のいい友達なんですね」と、勘違いしてしまった。本当の兄弟だと知り、「あまり似ていませんね」と言いかけたところで、「今、似てないって思ったでしょ?よく言われるんです」と笑いながら突っ込まれた。そんな明るい二人が取材を快諾してくれたのは良かったが、東京行きの新幹線の出発まであと15分しかないという。せっかく捕まえた、いや、立ち止まってくれた好青年に「やっぱりいいです」とは言えない。時計の針を気にしながらのインタビューとなった。

今回の旅行は1週間だけ寄り道した韓国も含めて、たっぷり35日間。すでに終盤で、来週には帰国予定とのこと。これまでのハイライトを尋ねると、「たくさんの素晴らしい体験をしたので、選ぶのは難しいですが、特に印象的だったのは、ニセコでスキーを楽しんだこと、宮島の厳島神社で新年のおみくじを引いたこと、それから桜島の雄大な景色ですね」という答えが。「なるほど、ニセコと桜島・・・えっ?」と一瞬混乱してしまった。このコーナーではおなじみ、外国人旅行者だけが購入でき、新幹線を含む全国のJR全列車に乗り放題という“最強”の周遊きっぷ『ジャパン・レール・パス』を最大限に活用して、彼らは北海道から四国・九州まで、日本を縦断していたのだ。北海道のニセコでオーストラリア人が経営するスキーロッジに滞在してクリスマスを過ごした後、各地を巡りながら南下して、鹿児島の桜島ではトレッキングを満喫。スマートフォンに収められた写真をその場で見せてもらうと、そこには全国の名所を背景にした二人の笑顔が溢れていた。

北海道・ニセコで念願の雪と戯れる二人。
「オーストラリアのパースは乾燥地帯で暑いので、スキーをしようと思ったら飛行機で4時間も移動しないといけないんですよ」

アウトドア好きの二人も大満足だったという、快晴の桜島をバックにしたお気に入りの一枚

 

ところで、兄のディランさんは2度目の来日、しかも富士市に来たのも2回目とのこと。「また新富士駅に来たかったんです」というが、いやいや、富士山のリピーターならともかく、駅のリピーターには初めて出会った。理由を聞くと、「前回ここに来たのは3年前ですが、新富士駅の観光案内所はスタッフがとても親切で、無料レンタサイクルなどのサービスもあるので、気に入りました。距離的にも東京から日帰りで訪れるには最適です。今回は弟もいるので、ぜひ連れて来て富士山の写真を撮りたいと思ったんです」と絶賛。富士市での滞在は数時間のみだが、自転車で周辺を散策し、中央公園で富士山の写真を撮って、近くにあるスーパー銭湯でのんびりしてきたという。「家族や友人にポストカードを送って、そろそろ東京に戻ろうと思っていたら、やけにフレンドリーな記者に声をかけられました」と屈託なく笑う。

フレンドリーなのは彼らも同じで、他の旅行者や地元の人と積極的に交流していた。母国から持参したコアラやカンガルーのぬいぐるみや国旗、オーストラリアの代表的な発酵食品であるベジマイトなどを、親しくなった人にプレゼントするという。「新幹線の中で泣いている赤ちゃんにぬいぐるみをあげたら、笑ってくれましたよ」と、嬉しそうに話してくれた。「また日本に来たいですか?」という問いには、「もちろん!」と即答。「どこに行っても日本の人々は本当に親切でした。僕は中学・高校で日本語を学んでいたんですが、大学を卒業したら日本に戻ってきて、英語教師として活動したいと思っています」とアダムさん。次は3回目となるディランさんはさらにマニアックで、「和歌山の高野山で宿坊に泊まりながら、周辺の山々をハイキングしたいですね」と、意欲満々。そして新幹線の発車時刻が迫る中、北の空を指差しながら最後に伝えてくれた言葉が嬉しかった。「次に日本に戻ってくるのは、きっと夏でしょうね。だっていつか登ってみたいですから、あの美しい富士山に」。

(ライター/飯田耕平)

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