フジサンタカイネ【マレーシアからようこそ】
富士山周辺を訪れた外国人に 突撃インタビューしてみました
暖冬で例年よりも薄めではあるが、富士山の雪化粧がようやく整ってきた2月某日、外国人観光客を探して新富士駅を訪れた。観光案内所に顔を出したところ、「たった今、おひとり自転車で出発しましたよ」との情報を得て、ここぞとばかりに後を追う。無料レンタサイクルを利用する外国人の多くが訪れるという富士市内屈指のビュースポット、田子の浦みなと公園を目指したところ、予想が見事に的中した。冷たい海風を受けながら、颯爽と自転車を走らせる若い男性を発見。前カゴには「富士山レンタサイクル」の文字が。これは間違いないと確信し、声をかけてみる。
アズリ・イスマイルさんはマレーシア・クアラルンプール出身の26歳。3年前からイギリス・ニューカッスルで電子工学を学ぶ大学生だ。長期休暇を利用した母国への帰省に合わせて、以前から興味があったという日本への一人旅を計画したとのこと。わずか8日間の日程ながら、大阪から入国して京都、名古屋、東京を経て、最終的には北海道まで行きたいと笑顔で語る、やや無謀な(?)若者だ。観光では大阪城、金閣寺、名古屋城などの史跡巡りに重点を置いたらしく、「ノブナガ~、ヒデヨシ~、イエヤス~」と得意げに暗唱してくれた。食べ物では京都で購入した鰻重弁当に感動したそうで、イギリスの日本食レストランで食べた鰻とは比べ物にならない美味しさだったとのこと。
本題の富士市滞在について尋ねたところ、驚くべき答えが返ってきた。「日帰りで富士山に登るつもりでしたが、観光案内所で冬は行けないと言われました。残念です」・・・アズリさん、やはり無謀だ。まさしく本紙先月号で紹介した富士山格言『すべての道は富士山に通ず』そのもの。詳しく聞いたところ、旅行中の情報源はスマートフォンだけで、ガイドブックもパンフレットも持っておらず、インターネット上の地図で富士山に一番近かった新富士駅になんとなく降りてみたという。イギリスでも山歩きが趣味で、富士登山を楽しみにしていたが、仕方がないので駅のレンタサイクルを利用して富士山の遠景を楽しむことにしたらしい。
それにしても、アズリさんは取材中ずっと笑顔を絶やさない。「こんなにいい天気で、きれいな富士山を見ることができて、僕はラッキーです!」「地元の情報紙に取材してもらえるなんてラッキーです!」と、どこまでも前向きな発言にこちらまで笑顔になってしまう。せっかくなので富士山と駿河湾が見渡せる丘の上まで案内し、地理的な位置関係や製紙工場の煙突が富士市の主要産業の象徴であることなどを説明すると、とても喜んでくれた。「日本ではどの町に行っても出会った人が親切にしてくれます。日本の文化や歴史に関心があって、大学では第二外国語で日本語を選択しましたが、実際に訪れて日本がもっと好きになりました」と、最後はしっかりと握手を交わし、強風の中を再び自転車で新富士駅へと戻っていった。
当コーナーでは初めてとなる、一人旅の外国人を突撃取材したが、アズリさんは計画性が乏しい反面、一人旅の真骨頂でもある一期一会やハプニングを存分に楽しめるおおらかさと明るさを持つ好青年だった。残された時間はあと5日・・・どうか北海道までたどり着けますように。
レンタサイクルを活用して、田子の浦みなと公園で富士山と駿河湾の眺望を満喫したアズリさん。いつかまた夏に日本へ来て、富士山に登りたいと語ってくれた。
(ライター/飯田耕平)
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