ピアニスト・宮野寛子さんが奏でる富士宮の音

2021.12.08

富士宮市が首都圏に向けて市の魅力を広くアピールするために作製したオリジナルCD『美守の都・ふじのみや』。ピアニスト&作曲家の宮野寛子（みやのひろこ）さんによる楽曲は、国内第一線で活躍中のミュージシャンたちを交えて詩的に優雅に奏でられ、やすらぎとノスタルジーを聴き手に抱かせる。10代を富士市で過ごし富士宮西高校出身の宮野さんは以前から古民家や教会など空間の魅力を大切にしたライブ活動を行なってきたが、11月18日には田貫湖のそば、富士宮市猪之頭の山中にある『日月倶楽部』の野外能舞台で、富士宮を主題とした地元コンサートを開いた。

「一期一会　音楽と風景　富士山の恵み『美守』の都・ふじのみや」と題したこの野外コンサートは、ウィズコロナ時代の文化芸術活動を応援する文化庁のARTS for the future!事業のひとつ。宮野さんは「富士山を仰ぐ絶景の能舞台にグランドピアノを置いて、最高の共演者と、お客さまと、同じ時間を共有できることに感謝しています。コロナで生活様式は変化しても、私は不安よりどんな未来になるのか、期待のほうが大きいんです。あしたはもっといいお天気になる。そんな前向きな気分になれるように皆さんと一緒にコンサートを楽しみたいですね。」と語る。

富士山の雄大な自然と素敵な演奏。当日、会場を訪れた聴衆は一日かぎりの晩秋のコンサートに酔いしれたが、その模様はドキュメント風の映像を加味した作品として、2021年12月19日からネット配信される。

11/18のコンサートは富士山を背景に野外ステージで行なわれた。左から伊藤ハルトシ(チェロ)、コモブチキイチロウ(ベース)、宮野寛子(ピアノ)、岡部洋一(パーカッション)、藤本一馬(ギター)。

誰もが知るように富士山の女神は美しいコノハナサクヤヒメだ。本宮浅間大社には身も心も清らかになるお守りとして『美守』がある。そうしたことから、富士宮市はかねてから富士山を含む市内の“美”をテーマに自然や文化遺産などの魅力を首都圏に発信する「美守の都・ふじのみや」プロジェクトを推進してきた。宮野さんの手掛けた楽曲は、これまでに日テレ系『news.every』やテレビ神奈川『Weather report』ほかで放送されてきた。

チェロ・パーカッション・ギター・ベース・ピアノが、ときに白糸の滝の清涼感を、牧歌的な朝霧高原を、軽やかに人々の暮らしを、霊峰富士、浅間大社の尊さを、ジャズやワールド・ミュージックなどの要素を取り入れた多彩な表現で聴き手に物語る。CDジャケットにはイラストレーター・とどろきちづこさんによる現代版の“富士山曼荼羅”が描かれ、こちらも好評だ。

富士宮市CDは大人気で残念ながら配布完了だそうだ。

楽曲が誕生するまでの経緯や創作の秘密について聞いた。「高校時代に毎日通学して見つづけた私だからこそ表現できる、そんな富士山があるはずと思いました。都会で暮らす地元出身者が聴いて郷愁を感じてくださるような。ただ雄大な自然、特に世界遺産の富士山に合った音楽となるとさすがにプレッシャーがあり、試行錯誤の末にやっと納得のいく作品が出来上がった、という感じです。富士宮市の風物などもリストアップして、何度も足を運んでイメージを膨らませました。それだけに愛着がありますし、地元の皆さんが聴いてくださり、良かったよ、と喜んでいただいたとき一番の幸せを感じます。今回、コンサートの模様を後日ネット配信するのは、コロナになって、オンラインやSNSを抜きには語れない時代になったから。いずれは『美守の都・ふじのみや』に歌詞をつけ、ネットも活用しながら、市民の皆さんと一緒に歌い、奏でて、その映像を配信したいという夢があります。」

地元愛がたくさんつまった楽曲は、富士山の恵みに育まれた宮野さん自身の分身なのだろう。地元を語る瞳はやさしく、笑顔も素敵だ。「富士・富士宮地域の魅力をますます感じています。美しい自然、おいしい水、あたたかな気候、人柄の良さは貴重で、首都圏から遠くないだけに、今後移り住む方が増えるのでは。この地域が好きだから、音楽やラジオなどを通じて多彩な良さをもっと伝えていきたいです。」

映画音楽にも挑戦したいという。「好きなことをやってドキドキしたい。自分にストップをかけないで、やりたいことに誠実に向きあっていきたいと思います。」まさに“宮の寛ぎ”くつろぎを奏でてくれる宮野寛子さんの活躍に来年も期待しよう。