フジサンタカイネ【ノルウェー・スウェーデン・スイスからようこそ】
左から、ノルウェー出身のオルセンさん、スウェーデン出身のハンソンさん、スイス出身でスペイン国籍も持つヴィラルさん
富士山周辺を訪れた外国人に 突撃インタビューしてみました
今年もいよいよ富士山の登山シーズンを迎える。我らが誇る富士山に登るべく、国内外から多くの人が訪れることは喜ばしい限りだ。ただその反面、山開きに合わせて富士宮口へと続く富士山スカイラインではマイカー規制が敷かれるため、地元住民が五合目までの気軽なドライブを楽しめるのも9月までおあずけということになる。それならば今のうちにと、気軽なドライブ・・・ではなく取材の仕事で訪れた。
6月中旬の富士宮口五合目駐車場は、混雑とは無縁だ。六合目以上への立ち入りが規制されている時期で、旅行者にとっては交通の便も決して良いとはいえない場所だが、それでも外国人の姿はチラホラと見かける。ラッキーなことに、今回はすぐに取材対象者と出会うことができた。いかにも陽気そうな若い男性3人組だ。外国人旅行者に突撃インタビューをしていることを伝えると、取材は快諾してもらえたが、「富士山の感想を聞きたいなら、先に登ってきた方がいいですよね」と、改めて1時間半後に駐車場で待ち合わせということになった。
果たして予定通りに戻れるだろうかという懸念はあったが、とりあえず登山口で待っていればそのうち帰ってくるだろうと、しばらく屋外で待つことに。とはいえこの日は富士市街地こそ30℃近い暑さだったものの、標高2,400メートルでは話が違う。気温はひと桁で、軽装でウロウロするには限界があった。けっきょく車内に逃げ込み、下りてくる彼らを見失わないように、張り込み中の刑事さながら登山口を凝視し続けるという展開に。ずいぶん滑稽な映像だが、どうせならあんパンと牛乳でも持ってくればよかったと思い始めた頃、ようやく3人が下りてきてくれた。
いつもなら「どちらのご出身ですか?」という質問から自然に会話が進むのだが、今回は3人の答えがバラバラで、状況を理解するのに少し時間がかかった。ノルウェー出身のオルセン・エリックさん(21歳)、スウェーデン出身のハンソン・ヘンリックさん(22歳)、スイスとスペイン出身の両親を持つヴィラル・エステヴァンさん(22歳)の3人は、スペイン・マドリードの大学で経済学を学ぶクラスメイト。つまり留学生同士ということだ。日本への旅は計7日間。基本的にはずっと東京に滞在していて、この日はレンタカーを借りて、途中箱根に立ち寄ってからここまでやって来たという。滞在中に京都にも行かなければ新幹線にも乗らない個人旅行者というのも珍しいと感じたが、これまでの体験で一番楽しかった場所を聞いてみると、「新宿のネオン街とロボットレストラン」という答えが返ってきて、一瞬目が点になった。『ロボットレストラン』というのは新宿・歌舞伎町にある劇場型レストランで、その名の通り巨大なロボットや過激な衣装のダンサーが歌い踊るという、派手なショーを見られることで話題になったスポットだ。若い男性にとってはこれもまた日本の魅力のひとつとして受け止められているということが分かり、新鮮な驚きだった。
また今回の旅行先に日本を選んだ理由をヴィラルさんに聞くと、「僕たちは幼い頃からテレビゲームのスーパーマリオが大好きで、マリオが生まれた日本という国に憧れを抱いていました。当時はゲームに出てくる背景は日本の景色なんだと思い込んでいましたよ(笑)」と話してくれた。去年のリオオリンピックの閉会式で、マリオに扮した安倍首相がサプライズで登場するという演出があったが、日本国内での評判は別としても、海外向けの発信としては案外効果的なパフォーマンスだったのかもしれないと、今さらながらふと感じた。
そんな現代っ子の3人だが、「日本に来てイメージが変わったことは?」という質問には胸に手を当てながら、「日本人の心の優しさに感動しました。以前からいいイメージは持っていましたが、実際に日本に来てみると人々が本当に親切で、さらに印象が良くなりました」と語ってくれた。また移動にレンタカーを選択したのは日本の自然や風土を間近で感じるためだったそうで、実際に箱根や富士山を巡ったことでそれを味わうことができ、日本への興味がさらに深まったという。六合目から宝永火口へと向かう登山道では、速い流れで瞬く間に景色を変えていく雲に全身を包み込まれる体験をしたらしく、そのようすをスマートフォンに収めた動画を自慢げに見せてくれた。登山シーズンではなくても、富士山はその圧倒的な存在感で外国人観光客に素晴らしい感動と思い出を与えてくれているようだ。こちらとしても、車の中で長時間待った甲斐があったというものだ。
(ライター/飯田耕平)
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