フジサンタカイネ【ブラジルからようこそ】

富士山周辺を訪れた外国人に 突撃インタビューしてみました

「梅雨明け前はよく晴れていたのに 」そんな奇妙な声も聞かれた今年の夏。露出した山肌と青空が織りなす鮮烈な夏富士を目にする機会も少なく、地元住民としては消化不良の感もあるが、この夏も多くの外国人旅行者が富士山を訪れたようだ。登山シーズン真っ盛りの8月中旬ともなると、玄関口となるJR新富士駅前で外国人を見かけない日はない。毎度場当たり的な当企画ではあるが、今回ばかりは取材対象者もすぐに見つかった。遠目から見ても社交的な雰囲気のカップルで、話しかける前から「あ、この二人で決まりだな」という予感があった。これから宿泊する富士市内の旅館に向かうというので、ここで逃してなるものかと、図々しくも同行させてもらうことに。移動後、旅館スタッフの方のご厚意で、涼しく快適な館内の談話室をお借りしてのインタビューとなった。

今回の主役は、ブラジル・サンパウロ在住のエリオ・ベルフィオーレさん(31歳)と妻のマリーナさん(32歳)。ともにイタリア系移民を祖先に持ち、お互いに医師として勤務する病院で知り合ったという二人だが、旅行期間を聞いて驚いた。なんと今年の6月から半年間、世界を股にかけた旅を続けているというのだ。世界周遊航空券で、ドイツ、クロアチア、エジプト、南アフリカ、アラブ首長国連邦、日本(←今ここ)、インドネシア、シンガポール、ネパール、チベット、中国、オーストラリア、ニュージーランド、タイ、ベトナム、カンボジア、ラオス、ミャンマー、ナミビアと巡り、12月にブラジルへ戻る予定というスケールの大きな行程で、話を聞きながら頭の中で地球儀がぐるぐる回ってしまった。「日本とは働き方が違うので、こういう旅も可能なんです。帰国したらまた医師として働きますが、特に日本やアジア諸国はブラジルからあまりにも遠い地域なので、この機会に時間をかけて味わいたいです」と語るエリオさんだが、なんとも羨ましい限りだ。まだ旅は前半だが、これまでに訪れた国々の中で印象的だったのは、エジプト・ルクソールの神殿群やツタンカーメンの墓がある王家の谷、ナイル川を船で下るクルージングだという。いやはや、羨ましすぎて泣きそうである。

日本での滞在時間もしっかり確保されており、17日間。東京に始まり、日光、鎌倉、横浜、富士山(←今ここ)、京都、奈良、神戸、広島などを訪れるという。「ヨーロッパの文化はブラジルと似ている部分も多くありますが、日本の文化はアジアの中でも特に独自性があって、とても興味深いです」と、日本への関心が高い二人。国立公園の自然と東照宮・大猷院などの繊細で豪華な歴史的建造物が共存している日光の景観には特に感動したそうだ。その一方で、外国人に大人気のスポットとなっている東京・渋谷のスクランブル交差点なども訪れたそうで、「人が多くて、騒々しくて、驚きました。でも、いろいろなものが混在しているのも日本の魅力だと思います」と語ってくれた。またブラジルでは一般的に食用とされないウニを築地市場で体験し、その美味しさに感激したという。日本人の印象については、「とても親切で思いやりがありますね。日本では英語が通じないことも多いですが、それでも皆さんがジェスチャーやスマホのアプリを使ってなんとかコミュニケーションを取ろうとしてくれるのが、すごく嬉しいです」と、絶賛だった。

この日はあいにくの曇天で、富士市街から富士山は見えなかったが、明日五合目へ向かうという二人に富士山のイメージについて尋ねると、声を合わせて「BIG!」と一言。世界を歩く旅の上級者の目にも、富士山の存在感は魅力的に映るようで、期待に胸を膨らませていた。

エリオさんマリーナさんの気さくなキャラクターに加えて談話室の居心地も良かったおかげで、つい取材時間も長くなってしまった。別れ際、「インタビューのお礼に何かサポートできることがあれば、旅館への要望などを私がスタッフに日本語で伝えておきますよ」と老婆心を発揮したところ、ほどなく明らかになった事実に赤面を余儀なくされた。旅館のスタッフの方の英語が流暢で、何の問題もなく二人とスムーズに会話をしているではないか。中学校の教科書レベルの「なんちゃって通訳」が間に入る余地など微塵もなかったのである。

二人の旅の記録を綴ったインスタグラムのアカウントより、後日写真を提供していただいた。

エジプト・ナイル川クルーズで訪れた世界遺産のアブ・シンベル神殿にて

南アフリカではサファリを満喫

取材翌日の富士山では六合目から宝永火口まで歩いたとのこと。
インスタグラムの投稿ではこの写真に添えられたコメントとして、「Mt.Fuji…Heart of Japan」と書かれている

取材・撮影協力:ふじみ旅館(富士市荒田島町3-20)

(ライター/飯田耕平)

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